五話
今回はちょっと短めです。
ホールの外の騒ぎも落ち着いてきたようだ。
そろそろ戻らないと、見つかってしまいそうね。
早くしないと。
勢いよく立ち上がると、髪の毛が鼻をかする。
うっ、鼻がむずむずして……。
「はっくしょん!」
慌てて口を押えた。
やってしまったわ!何で今に限ってくしゃみをしてしまうの!
「誰かいるのか!」
「……!」
まずいわ。警備員に気づかれた!
急いで机の下へ隠れる。
机から顔を出すと、三人の警備員が拳銃を構えて音の出所を探っているのが見えた。
警備員が近づいてくるたび、拳銃がホールの照明を反射し、ギラリと光って存在を主張した。
血の気が引くって、こういうことなのね……。
あら?
よく見えるようになって気づいたけれど、警備員についている腕章が赤色だなんて変ね?
我が家の警備隊の腕章は、茶色と決まっている。
赤色の腕章は見たことがないわね。
「おい!出てこないと、この拳銃が火を噴くぜぇ?」
「さすが兄貴!かっこいいっス!」
「くぅ!このセリフ、一度行ってみたかったんだよなぁ!」
警備員たちのふざけた会話が耳に入り、現実へ引き戻された。
「ホールの中から何か聞こえて入ってみたけどよぉ、どうせ猫とかだろう?こんな縁起の悪そうな場所、誰も入らねぇよ。俺らはここで突っ立っているだけで高ぇ給料もらえるんだから、楽だよなぁ!」
「現場保存したまま捜査もしなくていいって、楽でいいっスね!」
ホールに、下品な笑い声だけが響く。
犯人を追うことに集中するため、という目的ならわかるけれど、捜査を一切行わない……?
どういうこと?
誰が警備員を動かしているの……?
考えているうちに、話していた二人の警備員は出て行ってしまった。
「まだもう一人残っているのに、油断しちゃダメだよ?お嬢さん?」
後ろから、からかっているような若い男の声が聞こえた。
しまった!警備員の会話に夢中だったわ……!
私の恐怖をあおるように一歩ずつ足音が迫ってくる。
耳を抑えてバッと振り向くと、赤い腕章をした警備員が拳銃をしまった様子が見えた。
くつくつと笑いながら姿を見せた男は、オレンジ色の髪に切れ長の目をもつ美丈夫だった。
逃げようとしても、足が震えて動けない。
男は、しゃがんでこちらの顔を覗き込んできた。
「くくっ!きれいな目がまん丸になって、零れ落ちそうだ。」
褒められた……?きっと嫌味ね。
「こんなに驚いてもらえるとは……わざわざ警備隊へ入団した甲斐があるというものです。……あ、先日はどうも!あの夜のショーは、楽しんでいただけましたか?」
あの夜のショー……楽しむ……まさか……!
残虐な光景を見せた、明るい声が嫌でも私の頭に蘇った。
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