TOGETHER
「や、だってよ、こいつもう、動かねーだろ。」
エッジははたと思い出したというように視線を宙にさまよわせると、ぽりぽりと頬を指先で掻きながら言い訳をする。
「そういう問題ではないと・・・っ!」
こめかみに血管を浮き上がらせるかのようにして怒鳴り出したリュナンを止めるように、エッジはがばりとリュナンの背中に抱きついた。そのとたんにリュナンは声を呑み込んで、エッジの腕を外そうと躍起になる。それを狙ったかのようなエッジの行動に、またしてもリュナンは深々とため息をついたのだった。
エッジと共に旅をするようになってどれくらいになるのか、リュナンは一人ため息をつく。最初から元気で馴れ馴れしくて、そして詰めの甘いやつだったように思うのだ。
『俺、エッジっていうんだ。あんた、魔術師だろ? 旅、してんのか? なら一緒に行こうぜ。俺、意外と強いんだ。』
にこりと笑ってみせた顔は、とてもじゃないが十七歳には見えなかった。あまりにも無邪気で幼くて、リュナンはつい、頷いてしまったのだ。それ以来ずっと二人で旅をしている。ときどきは一緒に旅をしていてよかったと思うときもあったが、リュナンはいつもエッジの能天気さに頭を抱えていたのだった。幾度危険だと注意したのか分からないほど、エッジは危険な行為を繰り返す。先ほどのように、魔物の最後を見届けないばかりか、ときには毒のある攻撃を受けてもへらへらと笑って治療もせず、大事に至る寸前まで陥ったことがあったほどだ。だから能天気だというんだ、とリュナンはいつも怒る。だが、それが放っておけないのだ、内心リュナンは。
パキパキと音を立てながら、焚き火の炎が燃えていく。リュナンは黙ったままそれを見、エッジはぐーっと両手を伸ばして大きく伸びをしていた。
「なぁ、明日こそ街に出んだろ? なら、普通の宿屋に泊まれるよな。」
伸びをしてそのまま、リュナンを見上げた。リュナンはちらりとエッジを見ると、小さく頷いてから「そのはずだ。明日にはエドガルドに辿りつくはずだ。……お前が寄り道などしなければ、もっと早い段階でその街に着いていたはずだが……、」と続けてやる。
「あ、や、あれはさ……。」
小さく言いよどむと、エッジは困ったように頭に手をやってぼりぼりと掻いた。その仕草を見るとやはり、これ以上の嫌味が出てこなくなってしまう自分に対して、リュナンは小さな自嘲を漏らした。十歳も年の離れた子供、だと思ってしまうその反面、無邪気に笑うエッジに対して奇妙な庇護欲が生まれてしまう。
「ま、済んでしまったことはいいとしよう。」
リュナンはエッジからす、と視線を外すと意味も無く焚き火している木を枝でかき混ぜた。舞い上がる火の粉を見詰めながら、リュナンは小さく息を吐く。エッジはそんなリュナンにはお構いなく、コトリとリュナンの肩へと頭を乗せると、パキパキと音を立てて燃える炎を薄ぼんやりと眺めながら、「リュナーン、今日ってさぁ何体の魔物倒したっけ?」とポツリと呟いた。リュナンは微かに肩に感じる重みと温もりとでわずかに高鳴ってしまった鼓動を隠すかのように、「十体以上は倒しただろう。」早口でそう答えた。
「そんなもんだっけ? 俺もっと倒したと思ってたんだけどなぁ・・・。」
エッジはポツリと眠たそうに呟くと、うとうとと瞳を閉じていく。リュナンは眠たそうなエッジの声を耳に受けながら、クスリと笑いをこぼした。
「そんなもんだろう。……明日は早いぞ、もう寝ろ。」
リュナンは小さく囁くと、うとうとと瞳を閉じたエッジの身体を横たえた。




