改造者VS悪意の改良者3
前話のあらすじ:いつの間にか場所が変わり、霧の都で刺殺されたか。と思えば場所が急に変わって海に沈められて溺死した。何が起きている?
眩しい光が目を焼いた。
跳ね起きると手足に血はついてなかった。鎖も縛っていなかった。呼吸は出来る。草の匂いがする。
草原の真ん中にいた。
昼の暖かな日差し。遠くには柵が見え、その向こうには小さな家と牛舎が見える。
平和で穏やかな世界が広がっていた。
心臓が飛び出す程速く打つ。周囲を見渡して次が来るのを警戒する。
牛、草原、牛、草原、牛、草原、牛……老人。
老人が鍬を持っている。けれど遠く離れて、そうそう簡単に近付いて、襲ってくるなんて事は出来ない。
牛、牛、牛、牛、牛牛牛牛……牛の動きが激しくなっていく。
牛牛牛牛牛牛牛牛牛牛牛牛牛牛牛牛に囲まれていく。
何かが不味い。そう思って立ち上がった瞬間、遠くで爆発音が聞こえた。
雄叫びが聞こえ、穏やかな風景だったものが猛牛の群れに豹変する。
逃げる、逃げる、逃げる、草むらに足を取られて転げ……何かが潰れる音がして、右手の感覚が無くなった。
後ろから迫ってきた音が目の前に、先に突進して去っていく。
砕ける音が響く、左腕の感覚が消えていった。
群れが地響きと共に過ぎ去っていく。
両足の感覚が無くなった、雄叫びの合唱が聞こえる。
何かの手足が飛び散って目の前に広がる。
痛い、苦しい、助けて、逃げないと………
残った体が蹴り飛ばされて赤い飛沫と共に宙に舞う。
広がった世界の中、向こうに見える老人は微動だにせず、こちらを見て、嗤った。
手には煙を吐いている銃が握られていた。
ああ、そういうことか。
受け身も取れない中、猛牛の群れに頭から落ちて、正面からやって来る猛牛の群れになすすべなく、蹄が視界を潰して、その音が響いて消えた。
いつの間にか薄暗い部屋に座っていた。
部屋の壁の端に座らされ、目の前にある重厚な鉄製の扉の向こうから音は聞こえない。
窓も家具も無い。明かりは背後にある何か、壁は灰色で凹凸が無い。
体中に鎖が巻き付けられ、首まで背もたれに固定されて、猿轡を噛まされて、椅子も金属製。動こうとしてもビクともしない。
どういう訳か魔法も使えない。
無音の中、自分の心音だけが木霊する。
次は何が起こるか解らない。
けれどその結末は解る。『死』だ。
今まで経験させられた全てのことは唐突に始まり、共通項はない。
が、全て『死』が結末になって、次が始まっている。
この状況が何かは解らない。
次に何をされるかも解らない。
けれど確実に、この後に何かが起きて、この自分は死んで、次の場所に移る。
毒ガスを撒かれるか、水か、あるいは油を撒いて焼かれるかもしれない。
扉を貫通して撃ち込まれた銃弾がハチの巣にするかもしれない。
扉が開いて剣士が一刀両断するかもしれない。
けれど、何があるにしろ最後には『死』がある。
そしてそれまで。それまでで終わって、次が始まる。
これまであったように、『死』に慣れてしまえばどうということはない。
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