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1927/1943

改造人狼VS未熟な淑女3 そして……

 ドス黒い羊水の水たまりの中心でそれは眠っていた。

 そこに居るのは人狼ではなく、間違いようの無い人間だった。


 改造された人狼を分解して、脳は残っていたのでそのままに、あとの体は元の人狼ではなく脆弱な人へと作り変えた。

 もうこの男には切り裂く爪も噛み砕く牙も欺く化けの皮も無い。

 どこから見ても調べても人である。


 生命の冒涜?確かにその意見は、現状を切り取って、部分的に見れば倫理的に正しい。

 こいつが貴族の子息を拐った誘拐犯で、屋敷に居る二人の兄弟でもあり、この国は人狼に対して紳士・淑女的に接してくれる場所であることに目を瞑れば、ね。


 このままこれを引き渡せば、説明出来ない不可解なことだらけ、都合の悪いことだらけで執事の世間的な立場は最悪。

 それだけでなくゴードン家の立場も非常に悪くなる。

 その上こいつは厳罰に処され、偏見も加速して間違いなく吊るされることになる。

 ゴードン家の家庭教師として、それを成すのは不味い。非常に不味い。『淑女の零』という観点から絶対に回避すべきことだ。

 それに、このままではシェリー君は間接的とはいえ、人質奪還のために人を殺す(最悪の一手)を打つことになる。

 それを避けたかった。その為のこの一手だった。


 事実を出来るだけ歪曲せず、かつ都合の良い筋書きに書き換える。

 ゴードン家に忍び込んだのはフローヴ=ナヌンというただの人間の成功者であった。

 動機は幾らでも捏造出来る。純粋に儲けを急いて事を仕損じたとでも、兄弟が良い環境で働いていると聞いて嫉妬で陥れようとしたとでも、捏造はなんとでも出来る。

 何せこの場で人狼……もとい元人狼側にこちらの捏造を拒否する術も否定する術も無いからだ。

 捏造を拒否すれば死刑は確定。協力すれば情状酌量の余地が生まれる。

 捏造を否定すれば、いや、否定したとしても戯言として流される。何せこちらにとって都合の悪い『人狼』というキーワードを引き出すには自分が人狼であるという前提が必要なのだから。

 つまり……

 「お疲れ様、シェリー君。現状、君に出来ることの全てが終了だ。その他は後ででも、他の連中がやっても、どうにかなる。」

 「そう、ですか……彼は、大丈夫ですか?」

 『前景』を使って魔力のロスを最小限にしたとはいえ人間一人分以上(・・)を作り変えた。消耗は著しい。

 「自発呼吸出来ている。見事な術式だった。さぁ、一先ずは休むといい。」

 「いいえ、教授。教え子の、居る、前で…こんなところで眠るなんて………とても、淑女、らしくは……ないで………………」

 魔力の消耗。それ以上に精神的な消耗が絶大だった。

 集中力の糸が切れたという奴だ。無論、切るように誘導はしたが。

 シェリー=モリアーティーの意識が暗闇に落ちる。

 急に足から骨が消えて、支えが無くなってそのまま地面に落ちていく。


 フッ


 地面に倒れる寸前で私が肉体の主導権を取り、止まる。

 まったく、手間取ってしまった。

 『C.D.E.』の応用で眠らせてしまうことも考えたが、あれは肉体そのものに制限がかかってよろしくない。

 この後の始末をする上(・・・・・・・・・・)()、それは容認出来ない。

 目の前の黒い羊水が沸き立つ。

 当然、分解途中で高温の物質を生み出したなんてことはない。

 「さて、すぐ済ませよう。無理はさせたくない。」

 人狼の内に潜んでいた何かが津波の様に襲いかかってきた。


 次章のお話、未だ出来てないです。有る所は有るのですが、無い所は無い状態。

 こうなれば、やるとしますか、行き当たりばったり(いつものこと)を!

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