前を向いてその先を見ていたい
前回のあらすじ:ここから一転攻勢ですよ。前回まで流血こそ無いものの、絵で表現したらグロテスクになる描写があったので、こうしてあらすじを用意する判断をいたしました。注意表現終了いたしました。
体が軽い。
頭の中の靄が一つ消え、思考がハッキリするようになりました。
「こんなの知らないな。」
頭蓋から染み出ていた何かが、戻っていき、そうして、体を治していきます……いいえ、いいえ違います!あれは作り変える動きです。
「速いなら、それ以上の速さに。」
足が長く変わっていきます。
「強いなら、それ以上の強さに。」
腕は太く、長く、そしてあれは……噴出口と射出口?
「殺せないなら、殺せるような形に。」
顔が、頭が、消えていきました。それにはもう用が無いとでも言いたげに、それが無くなり、体がより屈強になりました。
「これなら出来る。さぁ、やりましょうか。貴女を殺して、他の皆も殺しましょう。」
口が胴体に飲み込まれ、最後の言葉はそれでした。
「もう、そこにいる誰かは喋る気も無いのでしょうが、私も応えましょう。
さぁ、やりましょう。私を助けて、他の皆も助けて、最後に貴方も助けましょう。」
私は強くなんてありません。なんでも出来るなんて自惚れる気もありません。
それでも、助けたいのです。フィアレディーに託されて、教授に教わり、そして……先程作った壁から覗き込む影を見る。
そこには私のたった一人の教え子がいました。期待の輝きと不安の曇りがその眼にはありました。教え子から期待されている今、皆を助けて、大団円を迎えたい。
強欲で傲慢で浅ましい考え方。けれど、それを成し遂げないと、淑女足り得ません。
さてさて、シェリー君は意気軒昂、悩みは吹き飛んで晴れ晴れした表情。
だが、私は無根拠な楽観主義者ではない。
シェリー君は新たに技術を得て、強くなった。それに伴い悩みは霧散した。
しかし、状況は変わっていない。
魔力をかなり消費している。相手は未知で、更に変貌した。形状からその特性と、これからする事は明快だった。
殺す形だ。殺そうという形だ。
極限状態でこちらは全員助ける気満々。
形状が変わって人間どころか生き物から逸脱したこの元人狼まで助けようとしている。
成長しても本質は変わらない。まったくもって呆れるほどに面倒なことだ。
「私は何もしない。クソガキもオドメイドも、そこの人狼も知ったことではない。」
「当然です。」
「では、健闘を。」
『身体強化 』
今までかつてない、いいえ、かつて一度だけ体感させて貰った感覚。
改めてそれを思い出し、人為的に引き出す。
今までよりもっと前に、少し前のめりに、しかし転ばないように、前の光景を見る。
『身体強化 前景』
「モンテル君、カテナさんは任せましたよ!」
返答を見る余裕は無い。けれど、如何応えてくれるかは解っています。
私は目の前の光景に向き合うことにしました。




