人狼バトル4
「では、誘拐犯には解らず、君にだけ解る痕跡を残す方法とは如何なものかね?」
「私とモンテル君。その両者にしか解らない方法です。
先ずは練習していた『魔法』。その中でも彼が確実に使用出来る魔法は3つ。3つのうち、自分以外を対象に出来るのは『地形操作』のみ。
そして、私が彼に対して教える目的で見せた魔法は、つまり私が確実に使えると知っている魔法は4つ。その中で『地形操作』と相性が良い魔法は、これです。」
『水流操作』
水の塊が手の中に現れる。
それは徐々に肥大化して、空へと打ち上げられる。
「魔法だけなら、ゴードン家の人間は誰もが知っていたことだろう?
人狼兄弟が情報共有をしていたなら、筒抜けでは?」
「だから、魔法を使って、私達にしか解らない方法で手がかりを残したのですよ。
例えば、私達二人の出会いの一幕の再現を。」
水塊が空中で弾ける。天候は、通り雨。
雨が地面に打ち付けられ吸い込まれていく。
吸い込まれ、吸い込まれ、そして、変化はすぐに現れた。
轍の跡の横、何もなかった地面に小さな落とし穴が現れる。
人を落すためのそれではなく、人の足跡の形をした穴が浮かび上がっていく。
足跡の穴は人の歩いた痕跡のように描かれ、そして、片方の轍の跡へと伸びていった。
「歩く時に『地形操作』を行い、地表から少し深い地点に空間を作り出したのでしょう。
歩いてもこの痕跡は浮かび上がらない。踏んでも気付かない。
けれど水を撒いた時、柔らかい泥になった上部の地面が空間に流れ込むことで、初めて浮かび上がります。
最初に出会った時に仕掛けられた落とし穴。それを私が攻略した方法の応用でしょう。
これは我々にしか解り得ません。」
「成程。クソガキにしては考えたものだ。」
「参りましょう。」
そうして、大馬で迷いなく一方の道へと進んでいった。
そうして暫く走った後、答え合わせが行われた。
道の先に馬車が一台。それは今追っている轍の主だった。
「出来れば静かに。近付いて走って下さい。」
「ブルル」
相も変わらず草食動物とは思えない闘争心の塊。だが、馬車の真後ろに位置取りをして静かに、相手の馬車の出す音と自分の音を重ねて接近していく。この図体と馬力でよくもまあこれだけの技巧をやってのけるものだ。
「…………」
馬車の真後ろにつけた。だが、次の手を打たない。
先程の偽物同様の仕掛けを警戒していた。
あそこまで手の込んだ偽の手がかりを残すというのは考え辛いが、クソガキがしくじってあの手掛かりさえ誘拐犯に看破されていた場合、不意打ちではなくこちらが待ち伏せを喰らうことになる。
内部の状況は不明。
このまま御者席の奴に目撃されて面倒なことになる。
と、シェリー君が攻めあぐねていると……
『許してください!』
『もう許してください!何でもします!だからもう、家に帰して!』
『許して!帰して!どうかお願いします!』
クソガキの声が馬車の中から聞こえた。
『僕達を助けて下さい!』
シェリー君が冷静さを欠いて、ノープランで突撃をしようとしたその時だった。
『この通り、頭だって下げてます!助けて!』
衝動に呑まれかかったシェリー君が一瞬止まる。
クソガキが中の状況を大声で伝えた。しかもこの状況下での大声は命乞いとして不自然ではない。
「モンテル君、成長しましたね。」
笑って大馬を横につけるとH.T.を馬車に突き刺し。
『閃光』
光で誘拐犯の目だけ焼き。
『C.D.E.』
人質二人を確保し、馬車をバラバラに切り刻んだ。
到底かないっこない弱者が強者相手に意地の一刺しするの、嫌いじゃないです。




