人狼バトル3
「くっ……」
一人だけ目を焼かれた。
心を折られ、平伏している子どもを見て、隙が出来た。
対して頭を下げていた二人は無事だった。
『C.D.E.』
その隙のお陰で、もう一度馬車を斬る事が出来た。
そして……
「お待たせしました!」
バラバラになった馬車の中から人質二人を発見。そして回収が出来た。
少し前のこと。
馬車の轍の分かれ場所にて、シェリー君は考えていた。
この時、相手の思考はどうだったか?
何を狙い、何を企み、何を仕掛けたか?
無論、『相手』とは誘拐犯のことではない。己の教え子の方だ。
「……何もしなかった。それはないと思います。」
「それは何故かね?」
「ここまでに彼が暴れていたなら、誘拐犯はここに来る前に人質の人質、つまりカテナさんを見せしめに殺すか、そうでなくとも痛めつけて見せて、その一部を捨てていたでしょう。
そうすれば、モンテル君は大人しくなりますし、追っ手は捨てたそれを見ざるを得ない。注目して回収せざるを得ない。それを見た者は動揺する。
それをしなかった。
いいえ、させなかったのでしょう。
不用意に暴れなかった。順調に進めさせ、人質を傷付ける事にリスクを作り出し、相手に傷付ける理由を与えなかった。
モンテル君は自分に出来ることを、何をしないという形でこの時までしていたのでしょう。」
「であれば、ここでも不用意な真似はしなかったのではないのかね?
ここまで大人しくしていたんだ、ここで事を荒立てては今までの大人しくしていた意味が無かろう?」
「いいえ、ここまで大人しくしていたのは、この時までやっても意味が無かったからです。
相手は馬車。人質がいて、拘束しているなら出来ることは限られている。
拘束されていなくとも、見張りが居る中で行動を起こせば、目撃されてそれまで。
しかし、ここでは人質二人を外に出すでしょう。それなら誘拐犯は警戒します。
声を出されて聞かれる・目撃される・逃亡……リスクを加味して警戒します。人質ではなく、それ以外のすべてを。
この瞬間だけなのです。外に出て、相手の警戒が緩み、何かを残せる瞬間は。
だから、ここに何かを残しているはずです。」
「そんなもの、相手方も警戒するだろうさ。そして相手は人狼。クソガキの頭で考えられる子供騙し程度なら容易に見つける。違うかね?」
「確かに、相手もさる者。見逃してはくれないでしょう。しかし、彼はここまで耐えてきました。
牙を剥きたい衝動を押し殺し、背を向けて逃げたい恐怖を抑え込み、ずっとこの一瞬のために刃を研いできた。
教授の教え子たる私の教え子が、まんまとしてやられたままだと思いますか?」
笑顔を向ける。
狡い笑顔だ。だが面白い。
「では、何かを残したのかね?狡猾で鋭敏な人狼の目と耳、それに鼻を潜り抜けたと?どうやって?」
更にニッコリ笑顔で応える。
「誘拐犯には解らず、しかし私には解る方法で、です。」
こんな状況下で嬉しそうな顔をしている。
『私には』だなんて口を滑らせて、ね。




