人狼バトル2
馬車を乗り換えた時に、ワザと転んだ。
今、コイツの事を攻撃することなんて出来ない。
カテナを連れて逃げることも出来ない。
だからと言って、諦めることも出来ない。
だから、出来る事をやった。
馬車を変えるなら、それがどの馬車か、どっちに行ったか、それが解れば大きなヒントになる。
だから残した。自分がまともに使える魔法は『身体強化』と『強度強化』と『地形操作』だけ。
持ち物は魔法の練習用に使っていた縄だけ。
残せるものは限られていた。
だから転んだ時にやってやったんだ。
『地形操作』
転んで地面に触れた瞬間、瞬間的に変形させて、小さな穴を開けた。倒れた自分の身体を盾にして。
その中に懐の縄を入れて、すぐ埋めた。
自分の手でも出来ること。わざわざ魔法でやる意味なんて普通はない。
大した力でもない。わざわざ魔法でやる意味なんて普通はない。
けれど細心の注意を払ってやる。
音を立てないように、気付かれないように。
先生が、残したものに気付くように。
地面に埋めた縄が、コイツの手の中にあった。
手元にたまたまあった縄に適当に土をつけて見せびらかしてる訳じゃない。
あれは、先生からもらったものだ。間違いない。
「一見すると解らない。しかし、よく目を凝らせば見える。そして、縄の先には結び目。この馬車が進んだ先を示すように埋めてありましたよ。
私の耳と目が非常に良かったから解りましたが、目隠しで不安定な中の転倒というあの動きは自然でしたから、耳と目が無ければ到底気付きませんよ。」
耳かよ……厄介だな。
「強力な魔法ではありませんが、静かで綺麗な魔法。
教えた方の理解度、熟練度が解ります。
敢えてこの状況下で衝動的な攻撃や短絡的な逃亡をせず、しかしその実密かに追っ手を手引きする度胸、強かさもある。
それも、家庭教師の先生の為せる業ですか?それとも、貴方がどこからか覚えた知識ですか?」
興味があるのは先生かよ……腹が立つ。
落ち着け。先生は確かに強いし物知りだし、訊いておきたい気持ちは確かにそうだ。
「君の先生が追い駆けて来るとしても、手掛かりは無し。手詰まりにはなりましょうが、それでももし追い駆けてくるとしたら、見つかったら、私は恨みを買うでしょうね。
しかも、凄まじく。そうなったら、こんな弱者は捻り潰される。」
なんか、変だな、コイツ。なんか、どこか他人事みたいな、こんだけやってるのにやる気があんまり無い様な、変な感じだ。
「どちらにしろ、貴方の手がかりは私が処分しました。貴方は助かりませんよ。」
ああ、そうだった。もうやることというやることは終わったんだった。
そしたら、もう……
「ぇ、ください。」
「はい?」
「許してください!」
「もう許してください!何でもします!だからもう、家に帰して!」
「……折れましたか。随分と遅かったですね。」
にっこりと笑った。
「許して!帰して!どうかお願いします!」
頭を下げる。寝ぼけてるカテナの頭も少し強引に下げさせる。抵抗が無かった。
「僕達を助けて下さい!」
「それは、出来ないですね。」
「この通り、頭だって下げてます!助けて!」
「それは出来ない。」
「……ない。」
「ん?」
頭を下げながら口にした。
「お前には言ってない!」
馬車の扉に穴が開いた。
「刀剣?」
否、それは一枚の薄布だった。
『閃光』
布から眩い光が放たれた。
これを書きたかった。




