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崖から飛び降りる最中、周辺の光景が一望出来る。
「刮目するといい。」
「気乗りは一切しませんが、なんとかやってみます!」
『身体強化』・『強度強化』・『水流操作』・『気流操作』
重力に従う最中、僅かに涙ぐみながら目を見開いて周囲を見渡す。
数人が歩いている。だが大きな荷物を持っている様子は無い。
人間二人、あるいは分散して一人ずつを運んでいる様子も無い。
馬車は……一台。
御者は顔が隠れて見えない。
後ろの方も、小窓はあるがカーテンで見えない。
そして、轍の跡が深い。乗っているのは一人ではない。
「あちらに、お願いします!」
落下前、空中で指し示す。
「ブラァアアアアアアアアア!」
了解とばかりにそちらを向く。着地はもうすぐ。
そして、大馬の表情が鋭くなり、足の血管が浮き出て、全身が霧で覆われる。全身が文字通り焼けるように熱い。
「最短距離を駆け抜ける気満々とは、有難いな。」
「ええ、そうですね……」
意気消沈が表情に出ている。
だが、緩やかな着地なんてしている間に逃げる間が増える。
覚悟を決めていざ着地。
「ッ!」
見事食い縛った。
が、着地の覚悟は出来ていたが、その先の覚悟は出来ていなかった。
空中にいる時から、大馬は真っ直ぐ、目的地を見ていた。
己より速いものなぞ居ないことを証明するように、自分には羽が無いが、そんなもの無くともよいことを誇示するように、着地の瞬間、地面を蹴り飛ばした。
上下の衝撃をそのまま横への推進力へ変えた様に、今度は横に落ちていく。
周囲の光景が瞬く間も無く後ろへ消えていく。
台風に頭から突っ込んだ様に暴風に襲われる。
後ろに引っ張られるが、それに抗う。引っ張っているのは死神。そのまま引き摺られていくと死ぬ。
ギャロップする度に爆発とクレーターを生み出す。
障害物は木だろうと岩だろうと無かったかのように粉々にして真っ直ぐ、真っ直ぐ、直線を描く。
訂正だ、『砲弾』という表現は相応しくない。
砲弾はここまで真っ直ぐ飛ばないし、ここまで周囲に破壊を撒き散らさない。
「ブララアアアアアアアアアア!」
目的に到着。大馬が汗を滝の様に流し、息も絶え絶えのはずなのに全力で咆哮する。
己は速いと、己は強いと、己はやり遂げたと、世界に誇示するように。
全力。死力。これ以上は無い。
故に、シェリー=モリアーティーはそれに応える。
己の守るべきものを守るために己の全てをぶつける。
『C.D.E.』
直ぐには止まれない。
馬の急停止を利用して前に飛び出す。その先には馬車。
H.T.が刀剣の様に伸び、馬車を切り崩した。
間一髪間に合わず、申し訳ありません。遅れました。




