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1903/1904

シェリー 爆走 ラン

 馬のギャロップ音を『パカラ』と表現することがある。

 軽快で小気味良い音だが、その走力は知っての通り。

 では、ここで質問だ。


 馬よりも体躯の大きい大馬のギャロップ音とは、どんなものだろうか?


 「乗馬をするのは、おそらく生まれて(パキュン)、初めてですが、こんなに過酷で危険なものなの(パキュン)、すね。

 これを趣味とされている学園の方々がいましたが、私には、真似(ゴキ)できません。」

 「違う。断じて違うよシェリー君。

 君は今、小さな池を(オール)で漕いで進む小舟と大海を横断する蒸気機関で動く蒸気船を同列に考える暴挙をしでかしている。

 ちなみに君が今乗っている船は蒸気船という表現すら生温い。そうだな、強いて例えるなら『砲弾』だな。」

 目の前を木々が阻む。

 そんなもの障壁にもならないとばかりに前足で蹴り倒し、後ろ足で踏み締めて前へと進んでいく。

 悪路?踏み締めれば平坦な道になる。

 山道?少し角度のついただけだ。

 足場のない岩山?蹴って足場を作ればそこに道はできる。

 邪魔者?道の向こうから武器を構えて突っ込んでくる輩がいたが、武器はスクラップに、持ち主は文字通り蹴散らされて喜劇のように吹き飛んでいったよ。

 騎手?まだ辛うじてしがみついているよ……まだ辛うじて。

 「ブラアアア!」

 速度は強さだ。

 重さは強さだ。

 そう言わんばかりに凄まじい速度で力強く走る。

 重くて速い弾丸がどれだけ殺傷力に富んでいるか、今、正にこの大馬は証明している。

 驚異的なのは、それだけ走って揺れが少ないことだ。

 通常の馬よりも少ないくらいだ。

 運動エネルギーを前へと進むことに注ぎ、無駄がない。

 だが今、シェリー君は舌を噛むからという理由で必死に歯を食い縛って、落馬しないように背にしがみついている。

 なぜそうなるか?

 理由は簡単。純粋な慣性の法則で引き剥がされかけている。

 嵐の様な風を正面から受けている。

 曲がった時には体が浮き上がって飛びかける。

 『蹂躙馬』の異名や逸話は伊達や酔狂ではないことが実証されつつある。


 大馬のギャロップ音とは、どんなものだろうか?


 答えは簡単。

 吹き荒ぶ風の音で聞こえない。

 もっと言えばそんなことに悠長に耳を傾ける余裕もない。

 油断していると追い付く前に落馬事故で死ぬ。

 さて、この先は……嗚呼、成る程。

 坂を駆け上がる。足元で破裂音が響く。踏み砕かれた拳サイズの石が砂になって散らばる。

 更に加速する。そしてこの先には。

 「先に言っておいてあげよう。覚悟をするんだ。」

 「それは一体どういうこ   」

 坂の上、そして坂の先にあるのは……

 下り坂、というか崖。

 最短距離かつルート上にいる何かを視認するには最適なライン。だが……y=-0.5xという具合だ。


 「ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛!」

 「ブラァアアアアアアアアア!!!」

 歯を食い縛ったままシェリー君が絶叫する。

 大馬が愉快痛快とばかりに咆哮する。


 非常に絵になる。名馬に乗った美少女が崖の上から飛び降りているその様は飛翔している様にも見える。




 サブタイトルy=-0.5xから変更しました。改訂したタイトルは略して……本作に鉄球の回転はありません。

 F1カーの速度で走るロードローラーに乗っているようなものです。ちなみにオープンカー。

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