羽の生えた馬
「誘拐犯が追い詰められたら、人質を盾にするかもしれません。もし、都合が悪くなったら……始末ということも考えられます。
そして、今私が提案したルートは、確実ではありません。」
「だから、アタシらにもう一つへ行けって?」
「はい。それらしき対象を捕捉したら信号弾で合図をお願いします。」
「手は出すなってことかよぉ?」
「俺達だって修羅場は潜ってまさぁ。これくらいは……いや、この言い方はダメでさぁ……それでも俺達に任せてくれたって……」
シェリー君が申し訳なさそうな顔を殺して微笑む。
「勿論、私も見付けたら信号弾を打ち上げますよ。だから、どうかお願いします。
教え子を、助けたいのです。それはそれとして、先生として格好つけたいのです。」
優しく、真意を覆い隠すように微笑む。
当然格好つけたいというのは嘘だ。
シェリー君の懸念。それはアレがもう一体いて、人質奪還を試みたこの三人は結局対処出来ずに返り討ちにされ、人質は保護出来ずに逃げられるか、あるいは始末されるという最悪の事態だ。
しかし、現状二つのルートを一人で回ることは出来ない。
シェリー君からしたら、正に断腸の思いだ。
「どうか、お願いします。彼らを助けるのを、手伝って下さい。」
頭を下げる。
断腸の思いでもこれが出来ればまあ合格としよう。
「……解った、アンタも無理はしちゃダメだよ。」
そう言って三人が馬車の中身を放り出し始める。
「屋敷の人にはあとで謝っとくよぉ。」
「なんなら捨てて下さっても構いやせん。」
手を振って、ウインクする。
「ありがとうございます!」
頭を下げる。
「じゃぁ行くよ!」
「気を付けてねぇ。」
「ご武運を。」
すでに三人、馬車に飛び乗り走り出していた。
「さて、我々は本命へ出向くとするか。」
「そうですね、参りましょう。」
死地に参る面持ちとは正にこの事。連中に行かせたのは当然、囮の方。
単独で制圧・人質奪還は中々骨が折れるから、当然こんな顔にもなる。
「で、参りましょうとは言うものの、何で出向く気かね。徒歩?それとも馬車?
生憎と破壊工作はバッチリで、馬車は車輪から車軸からグチャグチャ。
そもそも、生半可な足の馬が今から追いかけてもどうにもならんがね。
諦めて、『存在しないもの』にでも乗るかね?」
意味深に笑ってみせる。
「そうですね、飛ぶ様に速いことを願います。」
目の奥が光った。
外が騒がしい。
業腹だ。
俺様の王国内で騒ぐ者のはまだ許そう。俺様は寛大だから。
だが、目に余る真似をするならば蹴り飛ばす。
それが王たる俺様の運命だ。
またぞろ鬱陶しい輩が現れたか。
獣臭い戯け者は蹴り飛ばしたが、今度は踏みつぶしてやろうか?
王宮の扉が開かれた。
「力を貸してください。お願いします。」
小娘が己を見上げて頭を下げた。
昨日でちょうど1900話になったことをうっかり忘れていました。
集中力が無いでお馴染みの我ながらよくも続いたと思います。
どころか『あと100話で2000話。新しく読む人が読み辛くならないかしらん。』などと考える始末。あと100話書くことに対して何の抵抗もないのですよ。
それもそのはず。これだけ楽しくて、沢山の読者の方々の支えがあれば100話なんてあっという間です。
いつも支えて下さる皆様、ありがとうございます。これからもよろしくお願いします。




