可能な限り答えを書きなさい
屋敷外にて。
『火炎』・『地形操作』
炎を作り出し、その中に地面から抽出した金属を混ぜて炎色反応で着色する。
それが黄色の塊となり、上空へ放たれる。
塊が弾け、一瞬輝き、散る。
散った黄色は瞬く間に空気に溶け、無くなる。
時間にして二秒を切る。しかし、それで十分であった。
「さぁ、何をすれば良い⁉」
「準備万端だよぉ!」
「モラン商会参上でさぁ!」
地面が揺れ、それと共にモラン商会の走り屋三人組が現れた。
「皆さんに、お知恵を借りたく。」
書庫で地図を広げている。
写っているのは屋敷周辺の地形。
その中には当然、先刻吐かせた合流場所も赤い×印で記されている。
逃げているのは二人を拘束した状態の誘拐犯。
そこまで足は速くない。だが、それを過信すると相手にそれを利用されかねない。
さて、どうしたって誘拐犯を追いかける際には後手に回ることになる。
その中で慌てず騒がず確実に、正しい標的を追いかけなければならない。
どうすれば良いか?
「この辺は道が荒れてて逃げるにゃ向かないね。」
「ならここの道もダメでさぁ。ここ数年で人通りが減って、今は荒れてて倒木で通れやせん。」
「こっちの道はどうだよぉ?そこそこ走りやすいし、少し進めば大都市がいくつかあるし、そうすれば足はつかなくなるんじゃ……」
「その辺、警備官やらがうろちょろしてて厳しくなかったかい?」
「あー……じゃあこっちの道もダメだよぉ。賊が多くて警備官も沢山いる。しょっちゅう声かけられるよぉ。」
広げてあるのは書庫にあった小綺麗な地図ではない。
薄汚れて汚い文字が書き込まれてボロボロになった地図。
それは、平面に薄っぺらな情報を記して想像するためのものではない。
この三人が実際に走り、見聞きした経験が載っている。
特にこの三人は、商会に来る前からその手の仕事をしてきた。
獣道ならぬ蛇の道は蛇。
良からぬことを考える輩がどんな場所を嫌い、どう動くかを熟知している。
先手を取られたなら情報と数で戦局を引っくり返せば良い。
「考えられるのは、この道さね。途中に小さな町や村、隠れられる森や山もあって、警備官が多いって事もない。二人とも……ちゃんと誘拐して、然程時間が経っていないなら、ギリギリ未だ追い付くさね。」
「準備するよぉ!」
「出発でさぁ!」
三人意気軒昂と言った具合。だがシェリー君は思案顔だ。
それは、『ちゃんと誘拐して』という言葉に引っかかった訳ではない。
示された道に異論がある訳でもない。
ただ、今の回答が十分ではないという話だ。
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