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人狼VSモンテル=ゴードン

 ビリビリ目の奥が痺れるような感覚。

 ぼやけてヒビ割れていた視界が戻っていく。

 聴覚と嗅覚、触覚もそれに続いて取り戻す。

 ガタゴトガタゴト揺れる馬車。

 目の前に焦点を合わせると、不安で一杯という顔をしたメイドと、対照的に冷静そうな顔をしている子ども。

 不安になった人間特有の匂いがする。メイドは普通だが、子どもの方が少し薄い。

 こっちを見る目が敵意や恐怖に染まっていない。これは、警戒か。

 奇妙な子どもを攫ったものだ……そもそも自分は何故こんなことをしているんだ?

 ……あぁ、そうだった。邪魔な兄弟という血の繋がり、自分に繋がる足跡を消しつつ、そこで聞いた興味深いものを知りたいのだった。

 「怖がらせて申し訳ない。だが安心してほしい。私は君達を害する気は無い。

 実は、私は国王直属の秘密調査官でね、これは訓練なんだ。」

 「本当ですか?」

 息が若干荒くなりながらこちらを見る。

 「…………」

 「もちろんだ。誘拐犯とでも思ったのかい?いやいや、誘拐犯なら君達を拘束もせず馬車に乗せて私と向かい合わせで話すなんてしないだろう?

 訓練だよ。ゴードン家当主が緊急事態にどこまで対応できるかを調査するために、君達には協力してもらったんだ。」

 人を欺く人狼の表情と魔法を駆使した人心掌握術。

 メイドと子どもを騙すくらいなら造作もない。

 「嘘だ。」

 造作もないはずだった。

 「モンテル様?」

 「僕を馬車に連れて行く時、何と言った?『大事なメイドを傷付けられたくなかったら一緒に来い』と言っただろう。張本人の当主相手ならまだしも、協力者を相手にそんな本当の脅し方をするのはおかしい!」

 効きが悪いのか……まあいい。

 「こちらも訓練とはいえ妥協した方法を使って本番と差異があっては困るので。

 大変申し訳ありません。」

 「普通に誘拐する訓練なら僕一人を攫えばいいだろう。わざわざ本当にメイドを拘束する意味は無い。事情を説明して協力を仰ぐか、でなきゃメイドが馬車に捕らわれてると言うだけでいい。そうすれば僕は大人しくついてったよ。

 彼女を本当に捕まえた理由は、僕が暴れたり逃げたりしないように、『人質の人質』にしてるんだろう。」

 何も考えないバカではないようだ。

 決闘ごっこの話は聞いていたが、ここまで回るか?

 違うな、入れ知恵されてる。

 腕の良い家庭教師が強くしたと言っていたが、それか?

 貴族の家庭教師が誘拐や恫喝の解説?

 だとしたらとても面白いな。

 「安心するといい。僕は逃げない。ここで大人しく待っておこう。」

 「待つ?何をですか?

 もし私が誘拐犯なら、貴方をこの場で殺して何食わぬ顔で当主様を脅すくらい訳無いと思いますよ。

 生憎、逃走馬車は複数台用意してあります。その中から一つの当たりを見付け出し、貴方達を見付けるのは簡単ではありませんよ。

 大人しく待つなんて、愚行だと思わないのですか?」

 表情が一瞬恐怖で歪み、その後笑みに変わった。

 「殺すのは、止めといた方がいい。」

 それは命乞いや強がり、ではない。


 評価いただきましてありがとうございます。ブックマークも一時2900名になっていました。

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