表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1889/1932

もう一つの人狼兄弟の近昔話3

 こうして人狼の兄弟はゴードン家の庇護下に一時的に入ることになりました。

 とはいえ、問題もあります。

 現当主が子どもの頃に雇い入れたということになっているバトラーと違い、名も無き人狼には身分と呼べるものがありません。

 正体不明の何者かが屋敷に出入りしているというのはあまり外聞が良くありません。探られる可能性もあります。

 それならと、今から身分をでっちあげることも出来ますが、それで足が全くつかないということもあり得ません。

 それはゴードン家にとっては失脚のリスクであり、兄弟にとっても身分を暴かれるリスクでもあります。

 そもそも、いくら尽くしている執事の頼みとはいえ、当主が心の広い事を言ってくれたとはいえ、屋敷に後ろ暗い部外者を長く匿う理由がありません。

 兄弟は考えました。

 自分達で裏ルートの身分を買うことも考えましたが、そちらの方がリスクは高いでしょう。

 このまま逃げることも出来ません。

 逃げて捨てて生き延びた名も無き人狼はさておき、バトラーが手にしたものはあまりに多過ぎます。失うものが多過ぎます。何より長年仕えた主にこんな形で背く事は彼には出来ませんでした。バトラーは悩み考えました。執事として今まで培ってきた、執事として教わった全てを使い、望み全てが叶う方法を模索しました。

 その間、名も無き人狼も考えました。『自分はどうすれば良いのか?』と。

 こちらは逃げて捨てて来たので培ったものなど無く、教わったものもありません。だからこそあれこれ悩まずに簡単に結論に辿り着きました。そう、簡単な事です。執事のバトラーさんからの好意で頂いた薬を貰い、足が治ったら、その足でこの場をひっそり出て行くこと。

 簡単なことです。今までと変わらない毎日が、死から逃げ回るだけの毎日を繰り返す日々が再来するだけです。

 バトラーさんは兄弟の無事を知れて本当に良かった。

 自分の方は足が治って本当に良かった。

 この短い日々は両方に得があった。

 それで終わり。



 名も無き人狼は足が治った事を確認し、夜が明ける前に屋敷を出ようとして、捕まりました。

 「私はゴードン家執事、バトラー。

 お客様を追い出す事も、早朝お見送りも無しに出ていくことも、執事として決して許しません、私は、許しませんよ!

 私に良い考えがあります。どうか、任せて下さい!」

 この日、逃げて来た名も無き人狼は、一流執事によって初めて捕まりましたとさ。




 この後、ゴードン家当主と執事の間に何らかの取引があったそうです。知っているのは取引の当事者だけですが。

 そして、その後でゴードン家から一人の食客が突然姿を消しました。

 さらにその後、執事のバトラーが今までの倍以上に働き者になりましたとさ。


 めでたしめでたし。


 もう一人の人狼の話はここでおしまい。

 これからはゴードン家執事、もう一人のバトラーとしての物語に続きます。


 ブックマークと逆お気に入りユーザーさんが増えていました。ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ