至極真っ当で正当な手段による強迫
「ということで、当主様から許可を頂いたので、今日から新たな勉強を始めます。」
「解りました!でも、こんな何も無い場所で何をするんですか?」
クソガキが首を傾げていた。
場所は邸宅の一室、家具という家具も、特別な器具も無い。
そしてそれは当然だ、何も無い部屋を手配したのだから。
シェリー君がクソガキに向き合う。
「私はモンテル=ゴードン君、貴方の家庭教師です。違いありませんね?」
「はい、そうですよ?」
クソガキが困惑しつつも向き合って答える。
それはそうだ。これからやることはクソガキに関することだがクソガキは直接関係無いことで、見当がつく余地が無い。現状、クソガキは巻き込まれているだけなのだから。
「家庭教師として、今まで護身や魔法の指南をしてきました。
魔法の初級編はクリアし、今は中級編に突入していると言えます。」
『水流操作』は現在難航中。だが、順調に難航している。
『なんとなく』ではなく基礎を学び、魔法そのものに理解が有れば、そして継続して理解を試みれば、この先に答えはあるのだから。
「ここで更に、貴方に試練を課します。」
伸びていた背筋が弓のように張る。
「茶会の時に臨時で行ったマナー講座をこれからは定期的に行うことになりました。
魔法に加えてこちらも不肖私が教鞭を取ります。
言葉遣い、食事の作法、貴族の儀式全般、それにダンスまで……一通り私の出来る限りをお伝えします。」
「ぇ……あ、ありがとうございます。嬉しいです!」
喜び。だがその中に困惑が混じっている。
「……先生、聞いてもいいですか?」
「なんでしょう?」
「カテナも一緒に来るように仰った理由は何ですか?」
そう言ったクソガキが振り返る。
クソガキの斜め後方、追従する形でひっそりといたオドメイドが肩をビクつかせた。
「簡単な話です。彼女にもマナー講座に参加してもらうので、ここで説明を聞いてもらう必要があったから。それだけのことです。」
それを聞いてオドメイドが驚愕の表情をこちらに向けた。こちらの意図がやっと理解出来たのが見て取れる。反論しようと口を開きかけたが、もう遅い。
「食事や儀式は構いませんが、言葉遣いやダンスには相手が必要です。特に前者は実際に使って経験を積む事で自然な振る舞いとして身につくもの。
私より貴方との距離が近いカテナさんに練習相手になってもらえたら、上達の助けになるでしょう。
カテナさん、こういうことです。当主様には私から許可を取ってありますので、どうか、よろしくお願いいたします。」
言いたいことがあると言わんばかりの表情。だが何も言えない。
オドメイドは別にサプライズを望んでいる訳ではない。それなら堂々と、正規の手段で、クソガキに教えがてら、『練習相手として』、『ついでに』、教えてしまえば無償になる。
そしてオドメイドはこれに意見できない。シェリー君の行動は当主の許可を得た正当なもので、主人のための行動なのだから。
「不肖カテナ、承りました。」
シェリー君の勝ちだ。
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