現実という悪夢に向き合う
深夜、急に目を醒まして飛び起きた。
その表情は穏やかで、しかし悲しさを内包していた。
それは悪夢に魘された、というよりは夢が夢であったことを知ったときの、現実では決して叶わない夢だと悟ったときの表情だ。
「私は……どうすべきなのでしょう?」
「昼間のことかね?」
「はい、そうです。」
端的に言えば、オドメイドはシェリー君に淑女としての振る舞いを教えてほしいと乞い願った。貯めこんでいた給金をありったけ詰め込んだ袋を持って、だ。
『持ち帰って相談したい。』とシェリー君はその場を逃げたが、その後苦悩していた。
メイドがマナーを覚えて無意味ではないが、ロクなことにはならない。
人はどれだけ進化と成長を重ねても嫉妬や憎悪からは逃げられていない。
あのメイドがああ頼んで、主があれだ。となれば行く先、望む先は容易に予想できる。
だが、メイドが上等なドレスを着て、ドレスに相応しい振る舞いをして行った今回のままごとさえあの様だ。
本番に万一連れていくなんてなった日にはもっと酷いことになるのは明らかだ。
特待生としてやって来た村娘が名家のお嬢様より血の滲む努力をして、少しばかり上手くやっただけで知っての通りの厄介面倒荒事が起きている。そんな環境だ。
メイドとて、許しはしない。
シェリー君には私がいる。
だがメイドには、あの主しかいない。あれは今、守る力が無い。
シェリー君は一時教えるだけで、それ以降は守れない。守る義理も理由も無い。
教えるかどうかを迷っている訳ではない。
教えた結果、どうなるかを理解して迷っているのだ。
まったく、簡単なことをこうも悩むとは……真摯さの使い方を間違っている。
「君が仮にも『教師』という肩書きを背負っているのなら、『どうすべき』の答えはたった一つだ。
その肩書きが至上とするのは『教える者にとって最善を選ぶこと』だ。
茨の道であろうと、己の望まぬ選択であろうと、悍ましい過程の果てであろうと。
それが、教える相手にとって最善であるのなら、それを選ぶ。それが教師だ。
『未熟な己を棚に上げて人に教えを授け、『先生』などと分不相応に呼ばれる傲慢を許す以上、その代償を支払え』
私は君に『教授』と呼ばれる時、そう覚悟している。」
それは理想だ。
それはやり過ぎだ。
そんな教師いる訳がない?
馬鹿を言うな。少なくとも一人、具体例がいるだろう。
かの淑女を前にしてそれを言ってみたまえ、言えまい?
己の人生を丸ごと他人への教えに捧げたその覚悟を畏れろ。
「わかりました。やりましょう。」
目の奥に情熱が灯った。
「結論が出たなら、今は眠りたまえ。」
「…………はい」
それを言われて逡巡していた。案の定、今から作業を始めるつもりだったな。
そして残念、そうはいかない。
新年度早々に悪夢を見たのですが、起きてすぐ『ベタ過ぎて面白くない』という評価を下しました。どうせ悪夢を見るならそのまま話になる面白いものが欲しいです。
評価と、大量のブックマークをいただきまして、ありがとうございます。
ランクインして、よくよく総合評価を見て魂消ました。総合評価8500台に突入いたしました!




