↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
6/16

第6話:ザビルの甘言


「それでは、失礼いたします」


ルキエルが退出していき、大広間には魔王ひとりが取り残された。


「……で、魔法の実験の時間なわけだけど……」


魔王は玉座の上で、ぽつりと呟いた。


(実験室って……どこにあるんだ……?)


そう、一人でやれと言われても、この巨大で迷路のような魔王城のどこに実験室があるのか、案内なしではさっぱり分からないのだ。


結局、行き場を失った魔王は、ポツンと玉座に座ったまま途方に暮れるしかなかった。


(はぁ……俺、マジで無力だな……)


だだっ広い天井を見上げながら、魔王はぼんやりと自分の不甲斐なさを噛み締めていた。


(思い返せば失態だらけだ……。俺みたいなのが魔王なんてやってるから、みんなに迷惑がかかるんだよな……)


沈む思考のなかで、ふと先ほどルキエルが言っていた言葉が頭をよぎる。


(……ピピンって奴、魔王の座を狙ってるんだっけ……?

……じゃあさ、もういっそのこと、あいつに魔王の座を譲っちゃった方がみんなハッピーなんじゃないか?

どうせ、勇者との勝負もどう考えても勝てっこないんだし……な)


本気で「魔王譲渡計画」を考えはじめ、現実逃避の思考に没頭していた、その時だった。


「……魔王様、私をお待ちでしたでしょうか?」


「うわああああっ!?」


突如として足元の影から現れた人影に、魔王は情けない悲鳴を上げて跳び上がった。

見るからに妖しい紫のローブを纏っている。


深くかぶったフードのせいで顔は良く見えないが、唇が大きく微笑をたたえいたので、それがより一層恐怖を引き立てた。


「えええええ!?」


「失礼。影の渡り術で少々お邪魔いたしました。……して、魔王様。

先日の『あのお話』について、ご決断はお決まりになりましたかな?」


突然現れた女は薄笑いを浮かべ、魔王の顔を覗き込んでくる。


(え、あのお話……? なにそれ知らん怖すぎるんだけど! ていうかこの人どなた!?知り合いっぽいけど!!)


魔王が冷や汗を流しながら言葉に詰まっていると、大広間の扉が開いた。


「失礼いたします魔王様。そういえば実験室の場所ですが、お分かりになりますか……?」


部屋を出たはずのルキエルが、心配そうに戻ってきたのだ。

そして次の瞬間、ルキエルの視線が魔王のすぐそばに立つザビルを捉えた。


「……ザビル!なぜお前がここに!」


ルキエルの声から一瞬で感情が消え、冷えた殺気が玉座の間に満ちた。


「お前には魔王様への謁見禁止命令が出ているはずだ。

それどころか城内への立ち入りすら制限されている身で、何をしている……ッ!」


「おっと、怖い怖い」


ルキエルは激怒し、手にした羊皮紙の束を握り潰さんばかりに拳を震わせている。


そのあまりの剣幕と恐ろしい魔力の圧に、魔王は「ひえっ」と声を漏らして玉座で縮こまった。


(な、なにこの空気!? ルキエルちゃんマジでキレると一番怖いんだけど!? 殺される、巻き添えで死ぬ……!!)


「屁理屈を……! 近衛兵!ここに!」


ルキエルがそう叫んだ瞬間、ザビルはすっと身を翻し、影の中へと沈み込み始めた。


「フフ、野蛮な参謀殿のお邪魔が入っては叶いませんな。……では魔王様、また改めて。……次に二人きりになれた時こそ、『システムの終わり』についてお話しいたしましょう」


「……え?」


ザビルの残した謎の言葉に、魔王は思わず耳を疑った。


(システムの終わり……? )


あまりにも不穏で、そして今の魔王にとって、ザビルは完全に姿を消した。


「——近衛兵!!何をしている!!」


ルキエルの雷のような怒号が再び廊下に響き渡った。

慌てて駆け込んできた数名の近衛兵たちに対し、ルキエルは容赦のない叱責を浴びせる。


「警備は何をしているのですか! あの女が易々と、あろうことに魔王様の御前に侵入するなど、万死に値する大失態です! 直ちに原因を調査しないさい!」


「は、ははっ! 直ちに!!」


青ざめた近衛兵たちが蜘蛛の子を散らすように去っていく。


(システムの終わり……システムの終わりってなんだよ……。あいつ、一体何を知ってるんだ……?)


カンカンに怒っているルキエルの横で、魔王はその頭から離れない頭痛の種に、ますます頭を抱え込むのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。