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第15話:人間みたいな魔王?



勇者たちが拠点にしているという宿屋は、驚くほど質素なものだった。


「すまないね、助けてくれてありがとう」

「いやいや、いいってことよ」


ベッドにレニールを寝かせ、魔王は内心で首を傾げる。


(はあ……こいつらもこんな質素な部屋に住んでるんだな。

なんで勇者なのに国のバックアップとかがないんだ……?)


そんなことを考えていると、レニールは穏やかに微笑んだ。


「よかったら、後で酒場で会おう。ちゃんとお礼もしたいしね」


「ああ、もちろんだ」


(よし、これで近づくきっかけができたな)



約束の時間まで、魔王は街をぶらぶらと歩いてみることにした。

時折、通りすがりの人々から奇異な目を向けられるが、誰も自分が「魔族」だとは気づいていないようだ。


(誰も俺が魔族だなんて思ってないみたいだな……)


ふと、路地裏にある道具屋の大きな鏡面が目に入り、魔王は何気なく足を止めて覗き込んだ。

そこに映っていたのは、威厳ある(つもりの)魔王の姿ではない。

そこには、どこからどう見ても普通の、頼りない人間の青年の姿がぽつんと立っていた。


「え……? どういうこと……!?」


慌てて自分の頬を叩いたり頭を触ったりしてみるが、変化はない。

小道を歩きながら混乱していると、脳裏にあの不気味なザビルの声が蘇ってきた。


——「魔王城から離れれば離れるほど、魔人の力は抑制されますゆえ」


(ええええ、これってそういうことなの?じゃあ魔王城から離れたら魔族は人間っぽくなるの???)


キョロキョロと辺りを見渡す魔王。


「 もしかして、そこら辺の人間も実は魔族だったりして?」


「いえ、そんなことはないですよ」


と、突然背後から声をかけられた。


「うわああああああ!!!!!!」


派手に飛び上がり、慌てて胸を押さえる魔王。


振り返ると、いつの間にかそこにザビルが立っていた。


「おおおお、びっくりさせないでくれよ……心臓止まるかと思ったぞ……」


「あらあら、失礼いたしました」


魔王は心臓を押さえてなんとか落ち着きを取り戻した。


「それで、そんなことはないってどういうことだ?」


「確かに魔族は、魔境から離れるほど魔力は弱まりますが……魔王様のように、人間っぽくなることはありません」


「え、そうなの?」


「はい。実に興味深い観測ですね」


「観測って……俺を珍獣みたいに言うなよ……」


そういうザビルをじっと見つめる魔王。


ザビルはいつものように怪しげなローブに身を纏っているし、みようによっては人間と言われてもわからないかもしれない。


(……ん?)


だが紫の蒸気のようなものが常に漂っていることに気がついた。


(あれ、今まで気づかなかったけど、これって魔族特有のものなのかな?)


と魔王が不思議がっていると、


「ですが、魔王様には何か特別な秘密があるようですね」


とシビルが突然そういった。


ぎくっ。


(いやいや、なんだよぎくっって! やましいことなんてないよ……! ちょっと記憶があやふやなだけで、それ以外はない……はず……っ!)


冷や汗を拭う魔王を見て、ザビルはふっと妖しく微笑んだ。



「それにしても、うまく勇者一行と近づくことができましたね」


「ああ、うん。そこは感謝してる。今からあいつらと飯を食いに行くんだ」


実際に魔王は一緒に食事をするのが楽しみになっていた


(だってあいつらめっちゃいい奴なんだもん!)


普段のピピンとかこのザビルとか我の塊のようなのを見ているから、余計そう思うのかもしれない。


「では、引き続き観測させていただきますね」


そう言い残すと、ザビルは音もなく黒い影の扉の中へと溶けるように消えていった。


「あ、次は驚かさないでって言えばよかったな……」



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