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第四話 会いたいと思った日 ―レオルカside―

 レオルカは、ふと先日のことを思い出していた。


 王宮図書館の窓際の席で本を読んでいた少女。


 ルーチェ・アヴェリア。


 あの日から、何度か彼女のことを思い出すようになっていた。


 歴史の本を読んでいるとき。


 誰かと本の話をしているとき。


 ふと窓の外を眺めたとき。


 なぜだか、あの少女の姿が浮かんでくる。


「……また、会ってみたいな」


 そう思ったのは、あの日だけではなかった。


 だから数日後、レオルカは王宮の図書館へ向かった。


 扉を開ける。


 静かな空気が広がる。


 いつものように本が並び、窓から柔らかな光が差し込んでいる。


 レオルカは、自然と窓際へ目を向けた。


 ――いない。


「……今日は、いないのか」


 少しだけ残念に思った。


 けれど、特に気にすることでもない。


 そう思って、本を一冊手に取った。


 それから、また数日が経った。


 レオルカは、もう一度図書館へ向かった。


 けれど、やっぱりいない。


「……来てないんだな」


 今度は前より少しだけ残念だった。


 そしてまた数日、図書館へ行く。


 いない。


 また数日後。


 いない。


 最初は、ただ偶然だと思っていた。


 ルーチェがいつ図書館へ来るのかなど、レオルカには分からない。


 そもそも、彼女がいつも王宮にいるわけではないのだろう。


 それでも……図書館へ行くたびに、窓際を見てしまう。


 ――いない。


「……」


 レオルカは、本を開いた。


 けれど、なぜかいつもより集中できない。


 少しして、本を閉じる。


「……今日も、いないか」


 小さく呟いた。


 それから少しずつ、数日に一度だったはずの図書館通いが、二日に一度になった。


 そして――


 気づけば、ほとんど毎日のように図書館へ足を運ぶようになっていた。


 朝の勉強を終え、昼食を取る。


 そして、ふと思う。


 ――今日は来ているかもしれない。


 そんな小さな期待を抱いて、図書館へ向かう。


 けれど、窓際の席は空いたまま。


「……今日も、いない」


 そう呟いてから、レオルカは少しだけ考えた。


 どうして、自分はこんなに気になるのだろう。


 本を読むためなら、他の場所でもいい。


 歴史の資料なら、王宮にはいくらでもある。


 それなのに……なぜか、ここへ来てしまう。


 窓際の席を見る。


 誰もいない。


 その光景に、ほんの少し胸が沈む。


「……僕は、何をしてるんだろう」


 自分でも少し可笑しくなって、レオルカは小さく笑った。


 けれどその翌日も、やっぱり図書館へ向かった。


 そして――。


 その日、扉を開けた瞬間……


 いつもの窓際に、誰かが座っていた。


 淡い髪、膝の上に開かれた本。


 窓から差し込む光。


 見間違えるはずがなかった。


「……いた」


 思わず、声が漏れる。


 それだけで、胸の奥がふっと軽くなった。


 ルーチェはまだ、こちらに気づいていない。


 静かに本を読んでいる。


 レオルカはその姿をしばらく見つめていた。


 そしてようやく気づく。


 自分が何度もここへ来ていた理由。


 本を読むためだけではなかった。


 会いたかったのだ。


 ただもう一度、少女と話したかった。


 どうしてこんなに会いたいと思うのか、その気持ちが何なのか、レオルカにはまだ分からなかった。


 けれど、ルーチェに会えたことが、こんなにも嬉しい。


 それだけは、はっきり分かった。


 レオルカは静かに歩き出す。


 窓際へ向かって。


 もう一度、彼女と話すために。

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