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俺にブサイクと言われたら学年一位の美少女がなぜか懐いてきた  作者: 雪方ハヤ
第二章 学年一位の子との道

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第五十六話 止水

 ――少し前の『最上萌』と金沢――


「萌さん。君も白井がおかしいのに、気付きましたね」


 金沢家のカレー屋さん。最上萌と金沢はゆったりとイスに座って、語り合っている。


「うん。モエが最上家に来たときから、気になってたの。でもあの人いつ姉ちゃんに手を出すのかがわからない」


 萌は一口、水を口に含む。


「そうですね。ならば、『コイツ』はどうですか? 間違いなく、『罪を償う』という点では、彼しかいません」


 金沢はスマホを取り出し、ある人の顔写真を萌に見せる。


 ――最上咲良の視点――


 白井はハサミを持って、悠々と私に近づく。


「川口も、玉緒もおまえを殺せなかったのは驚いた。でも、今日、俺がおまえを殺してやる、殺してやる最上咲良」


「白井……どうして」


 いや、私もなんとなくわかる。


 あの日か……私は彼の告白を断った日。たしかに心苦しい言葉を吐いてしまった。


「『どうして』って? 俺は川口と玉緒と似たような者だ。でも、アイツらと違って俺は優しくない。徹底的におまえを――殺す」


 シュッ。


 またハサミの刃が近づく。一回目よりも読みやすかったけど、頬を掠られてしまった。


 右頬が痛い、横に線がなぞられた灼熱感がする。ほっぺからほろりと赤くて熱い液体が流れる。


「避けんなよ、最上咲良。避けてもここに人はやってこねえよ」


 もう言葉が出なくなっちゃった。千里くんという大切な人ができたのに、白井に思いっきり嫌われちゃっていた。


 過去に二度も死を掠った私は、そんなに怖くないかも。


 シュッ。


 三度目の刃がやってくる。体が重くて、もう刺されそう。


 いや、怖くなくなっているのではなく、何度も私を助けた男がいるから、私はここにいる――。


「最上さん!!」


 千里くんだ、でも、彼と私の距離は数十メートルもある。ついでに金沢もいる……なんでだろう。


 刃が私の肌に触れる。冷たい。


 スパン。


 ん? 刃が頬に掠った……でも、刺されてない。ハサミが、ある長身の姿に蹴り飛ばされた。


 私よりも先に、白井が声を漏らした。


「川口!!」


「――罪を、償いにきた。咲良ちゃん」


 なんで、ここにいる??


 白井はすぐに落とされたハサミに足を飛ばせる。しかし駆けつけた千里くんは白井を抱きしめ、拘束させた。


「動くな、白井!」


「ハサミ……ハサミ!! どけ!! 泉!!」


 白井はもがいてもがいて、手をハサミに近づける。しかし後を追った金沢は、ゆっくりハサミを拾う。


「ありがとうございます、川口さん」


 金沢はハサミを胸ポケットに入れる。


 私はホッと息を吐き、さっき助けてくれた男に顔を向いた。


「ありがとね、川口」


「…………」


「なんか話してよー」


「僕、先生を探しにいく」


 川口は頬を赤らめて、その場から走って逃げ出した。


 ※


 その後、白井は先生に捕まえられ、指導を受けることになった。


 私たちは一日の休暇をもらい、例のカフェに落ち着きに来た。


 私、千里くん、川口、金沢。この四人のメンバーが揃ったのは初めてかも。ほんらいなら、白井もいたのかな。


 まずは、千里くんが声をあげた。


「あぶなかったぁー! てか、なんで川口がいんの?」


 金沢は一口ブラックコーヒーを飲み、口を開く。


「萌さんと相談してたんです。白井はきっと危険な人物だと知って、咲良さんをどう救うのか。川口さんよりも向いてる人物はいませんよ」


 川口も言葉を追って、会話を続ける。


「とりあえずハッピーエンドでしたね、僕も萌さんに刑務所から勝手に出されたんで、戻るよ」


 そして私。


「ありとね! 川口。またね」


 ――一方、泉千里の視点――


 心がハリに刺されたかと思った。


 カフェオレを一口含む。こうやって振り返りをしたのは、初めてだ。


 白井がいつもいっしょに振り返ってくれるのに、犯人はあいつだったのかよ。


「千里くん」


 俺の心が、再びドクンと鳴る。


「あとで、私のとこに来てくんない?」

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