第五十五話 白井が求める、結果
――白井の少し前の話――
「最上さん、好きです。付き合ってください」
俺は隠れて片思いをしていた、お嬢様に告白した。いつも俺のそばに居て、純粋な笑顔をしてくる『最上咲良』に心が動いた。
「白井……君の仕事はなに?」
「最上家の、執事です」
「ならわかるよね? 君と私の間にある『差』」
俺は頭が空っぽになり、心にガクンと崖から蹴り落とされた感じが回った。
「白井は自分の仕事だけやってればいいのよ」
本当に、今の俺の前に立っているのは、あの天使の笑顔をする最上さん、なのか?
――その日以来、俺の心に穴が空いた。
※
二月二十五日。
ある人物の登場のおかげで俺は彼女に『やり返す』方法を見つけた。
「あれ? 私、勘違いしちゃったかな? まあ言いづらいもんね。仕方ないから、君の最もかわいいお友達になってあげるよ!」
最上さんの前に立っているのは、男!? それにあんな姿の最上さん、見たことがない。告白を断るときの彼女でもないし、お嬢様の設定を貫く彼女でもない。
でもたしかに、泉千里、あいつは勉強にしか目にない。ちょっとくらいは最上さんも気になるはず。
そして、さらに俺が納得いかなかったのは。
「もう今日から私と付き合え!」
「は」
この『は』は、泉だけでなく、教室の扉の後ろに隠れていた俺も声を思わず漏れてしまった。
あの日から、最上さんが家に帰るたびに昔より笑顔が増している。
「へへ……」
「最上様、なんでそんなに笑ってるんです?」
「千里くんと話してるの、メッセージで。口が悪い子だけど、すっごくおもしろーい」
泉千里。なんでおまえはできる? 最上咲良と付き合うなんて。
泉……消えろ消えろ消えろ。
夢だよな? クソ……言っちゃダメだ。余計に最上さんから嫌われそう。
いや……悪いのは泉ではない。
俺の気持ちを弄んだ、最上咲良だ。
※
「もしもし、川口くん? 最上さんについての件だけど、あの人、彼氏つくったらしいぞ」
『はぁ……!?』
「よければだけど、最上さんへの復讐がてら、俺の計画を聞いてくれないか?」
――のちに実践したが、失敗。
※
「はじめまして、玉緒雪さん。泉のこと、欲しいよね」
「え、ええ」
「まずは最上さんを消さないといけないですね。よければ俺の計画を聞いてくれませんか?」
しかし。
「白井くんの意見は使わせてもらうわよ。でも、金沢って人も同じ考えを持ってそうだから、私、あの人と一緒に行動するわ」
金沢か……かつて最上さんの追求者。こいつはまずいかも。
この計画も、のちに失敗する。なにより、逆にやられてしまった――。
『僕は金沢って言います。白井くんですよね? 今すぐに駅前に来てください』
行かなければ、怪しまれる。
行くと、最上咲良は助かる。
金沢夙人、さすがは探偵だ。




