最終話 俺の最もかわいい、最上さん
――金沢の視点――
カフェから離れ、帰り道を歩きながら脳を回らせた。
川口は残念ながら、もう咲良さんに会う勇気がなく、転校するらしい。
先生からの連絡で、白井は警察が取り調べてくれるらしい。まあ、僕の情報があれば彼は刑務所行き確定だ。
「金沢くん」
「!?」
この声は。僕の、相棒だ。
「なに一人で帰ってるの。モエも入れてよ」
「ええ……」
小型のバックを背負い、私立校のベージュの制服を着る萌さんの姿が夕日に照らされる。
「萌さん、学校帰りですか?」
「そうだよ。私、友達いないから、一緒に帰ろ」
一緒に帰る、か。そうだな。こういうときって、なにか雑談をしたほうがいいのか。
「萌さん、学校は楽しい、ですか」
「ふふ、なにそのかったい質問。もちろん楽しいよ。私のさ、一人語り、聞いてくれない?」
「はい……」
「私ね、幼いときから両親を失ってたの。なんとかして真相を知りたかったけど、私の力じゃあ辿り着けなかった。今はもう諦めてるの。なにせ今、目先の人を大切に思ってくれる人を大事にしたいなって」
両親を失っていたのか。だから、最上家に。たしかに萌さんの資料には、彼女の両親について調べられなかった。
「萌さん……僕も協力します。両親について調べるのを」
彼女は頬を膨らみ、顔が赤く染まる。
「金沢くんって鈍感だね。私の大切な、目先の人、誰だと思う?」
「…………咲良さん?」
「バーカ」
「じゃあ誰ですか? って…………!!」
はぁ……!?
萌さんのぷっくりな唇は、僕の顔に近づき、僕の唇と触れ合う。
「私のことが好きって、千里兄ちゃんから教えてもらったよ」
――泉千里の視点――
人の気配を感じない公園にも、桜が咲いてきた。爽風に当たる体は、無意識に最上さんに近づく。
ビクッと、彼女の体が震えた。
「ち、近い!」
「ご、ごめん!」
ヒョッと、彼女から距離を置いて、顔を背ける。
「ナニナニ、私のかわいさに吸引された?」
「違います。そんなに、かわいくないです」
昔なら迷いもせず言えた言葉なのに、今は最後にハテナマークをつけないといけなくなった。
「ありがとう、千里くん。最初から最後まで私のわがままに付き合ってくれて」
「またそれですか……」
「何回も助けられて、感謝の言葉が尽きないよー」
ここ数週間は本当に忙しかった。これから最上さんと過ごす道に、もうめんどいなことが起きなければいいのに。
「千里くん……キスでもしよっか!」
「ええ!?」
体から彼女の体温、やわらかさが伝わり、心がおどる。
唇と唇がふれあう。もう回転できる脳じゃない。
「――これからもよろしくね」
なんでだ、口は開かれてないのに、まるで彼女の声が聞こえる。
これって、心が通じ合っているってことか? 夫婦によるあるやつ……ってなんで俺は結婚まで考えてんだよ!
――でも、そうだね。
最上さんのおかけで体験したできたことがいっぱいある。
でもまだ最上さんと体験していないこともいっぱい。
これからはどこに行こうかな。
ゆっくりと遊園地を回ったり、いっしょに同じ家で過ごしたり。
もし俺は毎朝、目を覚ませると彼女の顔が目に映れば、どんだけ幸せなんだろう。
かわいいよ。もう自分に嘘をつけられない。
いっしょに、まだ体験したことのないことを楽しも。
君となら、もう怖くないかも。
俺の最もかわいい、最上……いや、咲良ちゃん。
これからも、よろしくね。
みなさまお疲れ様でした!! 計五十七話、完読していただき、ありがとうございます!!
これからも泉さんと最上さんの物語が続きます。
ぜひまたどこかでお会いしましょう!




