第五十話 金沢くんが求める、天才
――金沢の少し前の話――
「中国に、父さんよりもすごい人がいるのか!?」
小さな小屋の中、ろうそくの光だけが輝いていて、僕と父さんは食卓についている。当時はまだ中学生だった僕は、父さんが『最強』だと思っていた。
「ああ、殺人事件の分析……たまたまこっちも少しだけ知ってた事件だったけど、それでも勝てなかった」
「う、うそだ! 父さんよりもすごい人はいない……」
父さんの名前は街でよく聞くし、ほぼ不可解の事件をパパッと解決できるような、スゴイ人なのに。
父さんより、スゴイ人なんて……いないはず、いや……会いたい、もしほんとうに居るのであれば。
会いたい……勝負をしてみたい。天才を知りたい。僕にとって天才は僕の父さんと、その教え子の僕だけだった。
――僕はこの会ったこともない、謎の子に期待を持つようになった。
中国人であるあの子とはかけ離れた存在なのは、知っている……それでも毎晩その姿を想像するだけで眠れなくなる。意識が落ち着かない、はっきりしている。
※
高校生に入った僕は、もう一人の人物に興味を持つようになった。
「金沢!! 四組にめっちゃ可愛い子がいるんだって! 見に行かね?」
僕の友人が言う。しかし僕は性的な欲求はない。毎日のようにあの父さんを超えたあの子を思っている。
「僕はいかないよ」
「学年一位の可愛い子だって! しかもめっちゃ優しいし」
学年一位……なにかしらの一位は僕の興味を湧かしてくれる。でもたかが可愛い子なんて。
「たしかあの子……最上咲良って子なの」
最上家の人間……!? あのお金持ちの娘か。かつて父さんが仕事で最上家と携わっていて、なかなか大金を払ってくれたそう。
「わかったよ、見に行きましょ」
「やっぱ金沢興味もっちゃってるじゃん」
異性として見ている、というよりも彼女がどういう人なのか気になった。
その後、僕はあたかも彼女の追求者かのように接するようになった。少しでもこの学年一位の子を知りたいと思って。
「金沢くん……私、君のこと好きじゃないの。身の程をわきまえてよ。私と君、雲泥の差だよ」
噂通り、かなりの塩対応だ。落ち込んではいなかった。
最上咲良の情報を調べていくうちに、彼女の家に新たな人物が出てきたことを知った。
――最上萌。
コンピューターのスクリーンが映す名前。初見だけど俺の心は動いた。
妹……いないはず。調べていくと彼女こそかつて父さんをほぼ打倒した者に違いない。
そして彼女の天使の笑みが、目に映る。




