第四十九話 ヤメテクダサイ!
「千里くんなにその顔ー! ほら私って知っての通り学校では裏の姿を見せてないし、こうやって自由奔放な性格ができるのは千里くんの前だけだよっ」
「それとその……え、えっちは違う話でしょ! 発言には気をつけてくださいよ! 誰かに見られたらエンジョウしますよ!」
「私は気にしないもん! 一度は死のうとしてた人だし」
やっぱ最上さんのいたずらは、慣れないな。最上さんはすごく無邪気に歯を見せて笑ってくるけど。
まったく、生死を軽く言うなよ。公園で彼女を救った日も、玉緒さんから彼女を救おうとしたときも、心が炎に焼かれているように焦っていた。
「とりあえず、うちに来ない?」
「家で、ですか!?」
「ちがうちがう! まずはうちの母さんが言いたいことがあるの!」
そ、そうだな。明里さんの娘を救ったわけだし、俺にお話があるはずだもんね。
なに家で……えっちなんてことを、って考えるのやめなさい! この俺!!
「わかりましたよ……」
※
「ウェルカム!! 泉くん」
「元気ですね、明里さん……」
やっぱ慣れねえ……こんな情熱的な明里さん。玉緒さんをにらんでいたときの顔とは大違い、これは隠しのない笑顔だ。
「そういえば、萌ちゃんは無事ですか?」
「ええ、無事よ。でも遅く帰ってたから叱っといたの。今日、あの子また金沢って人に会いにいくらしい」
金沢はまだ敵なのか中立なのかはわからない。でも、昨日手を出さなかったってことは殺す気はないだろう。萌ちゃんに任せていい。
まあ、明里さんもとうぜん萌ちゃんの実力は把握しているだろう。
「泉くん、うちの咲良の彼氏になってくれてありがとうね」
「えっ、ああ……」
「私と彼女の父さんも君のことを罵ってたけど、諦めなくて本当によかった。もう君たち二人のことは邪魔しないから……今日はうちで咲良と寝ない?」
え……は? なにを言って。俺と最上さんが、いっしょに寝る!? いくらなんでも母親が言うようなセリフじゃないでしょう!!
――一方、『最上萌』の視点――
私が向かった先は、金沢家が運営していると言われるカレー屋さん。中に入り、厨房で皿洗いをしている金沢が目に映る。
「また会ったね、金沢くん」
「萌さん。どうして僕のところに……」
「こっちこそ、どうしてモエに手を出さなかったのかな? 本当にモエのことが好きって理由は、納得いかない」
金沢は無表情……いや、唇が震えていて、なにか隠しているみたい。
「萌さん、帰ってください。もう君のことは見たくありません」
「じゃあどうして昨日は私のことを誘ったの? なにか言いたいことあるなら言ってよ」




