第三十八話 矛盾
「生意気ですね……最上萌さん」
「私の情報を掴んどいて、逆に挑んでくるとはね」
「所詮は小学生……情報なんていくらだってあるさ。君は七時間の睡眠を確実にとっていて、寝る前はいつも咲良さんと睨めっこしている。じつは左利きで、難しい問題に遭遇する際によく唇を噛む癖がある。必要でしたらスリーサイズまで答えられますよ」
ど、どれくらいの情報を持ってんだ? 金沢は探偵……にしてもこんな裏事情まで知ってんのかよ。
どうやって知ったのかはわからないけど、俺がついていける話じゃないよ!
「ふふ。小学生のスリーサイズを知りたがるのは、ロリコンの千里兄ちゃんくらいだよ。私はぜんぜん気にしてないもん」
「ち、ちがう! オレロリコンジャナイ!」
――一方、白井の視点――
俺が最上家の隠しカメラが存在することに気づいた日、金沢は俺を外に出させてくれた。
◇
「白井さん、どうぞ帰っていいですよ」
彼の家の扉の前、俺はどうしても理解できなかった。
「なんで俺を逃がせるの? 警察にチクれるよ? おまえが俺を眠らせたこと」
「僕、隠し作業が上手い人間ですので、チクられてもある程度は弁明できますよ。それよりも……これから泉さんが酷い目に遭うことになるから」
◇
その日から数日が経つ。学校には行ってないが、家ではずっとあの日のことでいっぱいだった。
そしてある日の夜、俺は金沢からメールが送られてきた。
『いますぐ、駅に向かってください』
俺は走って、走って、足を回転させて、静寂に包まれる駅に着く。
そして、最上さんが倒れ、ある女が彼女を運んでいる姿を見た――。
「おい! おまえ誰だ? 最上さんを離して」
ビクッとその女は体を震えさせた。そしてボツボツとなにか言っている。
「だれかに……バレちゃったのか」
その女はゆっくり振り向き、俺と目を合わせた。
うちのクラスの――玉緒雪?
「玉緒さん? なんで……最上さんを?」
驚いたって言うか……もう慌ててなにも考えられない……でも玉緒さん、変な目で俺をにらんでくる。
「白井、くんだっけ? 見なかったことにしてね」
は? もしかして、いや……玉緒さんが最上さんを拉致することはないはずのことだ。
一応……泉にも連絡しといた方がいいか! と思い、俺はポケットから携帯を取り出す。
指を回らせて、文字を打つ。
『泉!! 早く駅前に来て!』
「白井くん! なにをしてるの?」
「最上さんになにをするのですか?」
俺がそう聞くと、場が一気に静まり返る。冷たい空気が流れ込み、玉緒さんの表情が固まる。
「しょうがないですわね。君も……」
「なっ――!!」




