第三十九話 小悪魔
――白井の視点――
玉緒さんはカバンから一瓶のなにかを取り出した。
あれは……ビール?? み、未成年飲酒??
「へへ。白井くんにバレちゃったけど、最上さんはうちに遊びに来て、ジュースだと誤ってビールを全部飲んでしまったの。よくあるでしょ? 間違って飲んで。君も飲む?」
「飲みませんよ! 犯罪ですし」
「最上さん、飲みすぎて酔っちゃったの。私が最上さんを彼女の自宅まで運ぶわよ」
そうだな……無理なことだけどあり得なくはない。玉緒さんが最上さんに害を与えるわけないよな。
でも俺も一度金沢にやられてんだよな……このまま放っておくか?
「ねえ! 白井くん、私と最上さん、友達なんだから」
「無理です」
「ふぇ?」
「他の人に言わないで欲しいのですが、俺は最上さんの執事です。真夜中だし、安全を考慮して彼女は俺が自宅まで運びます」
――一方、泉千里の視点――
「面白いですね、最上萌さんも泉さんも」
金沢は余裕っぽくハハッと笑い、俺らを見つめる。まったく、金沢を完全に信じていた俺が悪かった……こんなやつも最上さんを狙っていた。
「泉さん。僕は君の仲間ではないと言いましたが、君の敵だとも言ってません。僕も泉さんの幸せを祈っています」
「それで玉緒さんと組んで俺を陥れるわけ??」
「僕は君も咲良さんも傷つかないように努力しています。今、咲良さんと玉緒さんは対峙していると思われますので、白井さんをそちらの方に呼びましたよ?」
金沢はドヤッとした顔でまるで僕はやさしいと訴えているみたいだ。完全に玉緒さんの味方ではないってわけか。俺は最上さんと離れたくない……でもそうしたら玉緒さんは。
「…………まあ、泉さん、玉緒さんじゃなくて最上萌さんと恋愛したいのなら、僕は手助けできませんよ」
「しないって!!」
萌ちゃんに目線を配ると、彼女は眉間にしわを寄せて、複雑な目で俺を見つめる。
「萌ちゃん! 本当にしないって!」
「えっち、千里兄ちゃん」
どういうムードになってんだよ! なんで俺は萌ちゃんと恋愛する流れになってんっすか!?
金沢はむりやり笑いをつくり、俺たちを止めた。
「まあまあ、泉さん。今はとりあえず白井さんの方に向かいましょう?」
しかし俺の返事の前に、萌ちゃんが声をあげる。
「ダメ。モエは姉ちゃんを守る。姉ちゃんと千里兄ちゃんを結婚させる。君をいかせるわけには……」
金沢が、萌ちゃんに向かって歩き出す。目から殺気が溢れ出す。
ギュッと、萌ちゃんの細くて白い腕が掴まれる。
「萌さん……僕、戦うのは苦手ですが、小学生には負けませんよ」
「イ、イタイ」
萌ちゃんに手を出すのか!? まずい、萌ちゃん口を開いていて苦しそうに手を引っ込もうとしている。
「金沢! 女の子に手を出すのか?」
「いいよ、千里兄ちゃん」
「え?」
すると萌ちゃんはフッと手を振って掴まれた状態から離れる。金沢は少し目を大きく開いて目の前の少女を見つめる。
「意外と強いですね」
「ふふ。私が無防備に君と近づかないよ。モエは賢いんだ」
萌ちゃんは胸元にある、苺サイズの黒いなにかを取り出す。金沢はすぐさまそれに気づいた。
「カメラ!?」
「やっぱ金沢先生ほどじゃないじゃん。ばーか、ざーこざーこ」




