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 堂島があまりにも大きな声で笑うので、ツイッターでは番組公式ハッシュタグを付けられたツイートにて「マサシうるさい」「マサシ声でか(笑)」「まさしくん音割れひどい」と散々言われていて、林もケラケラと喉を鳴らして笑う。


「皆ひーどい。そんな言い方ないじゃんねー」

「でもマサシの笑い声が大きいのはいつものことですから」


 弁明のふりをする加地は、あんなことがあっても仕事はきちんとこなしていて、少し窶れて見えるような気もするが、充実した活動を続けているようだった。


「いやー可愛いね、笑う子は可愛い。きっとこれも愛ある毒なんとちゃうの」

「いやー、そうですかね。俺らも五月蠅いっていっつも思ってるんですよ」

「いやいや、そんなこと言うて」

「でも本当に、あんまり喋らないくせに笑い声は大きいんですよ。ファンの皆もカンタも言うけど、本当に五月蠅い」


 二人の言い草に堂島はふくよかに見える頬を膨らませて唇を尖らせる。


「そこまで言うなら俺もう二度と笑わない。口も利かないから」

「ウソウソウソ、ごめんて」


 林が焦ったように笑顔を作って堂島に懇願すると、その様子に堂島がプッと吹き出し、加地もそれが伝染したように笑った。


「あはは。でも、五月蠅いくらいの方が空気が入れ替わっていいんですよ。助けられてます」

「林くんがムードメーカーなら、堂島くんは癒し系担当ってとこなんかな」

「ああ、そうかも」

「っすね」


 そのとき、ガラス張りの向こうからスタッフがアイコンタクトを送ってきて、片手を挙げて小さく頭を下げた。エンディングの合図だ。談笑のボリュームが下げられジングルが流れてから、S@Hの新曲のイントロが流れはじめた。


「それではここで、お別れの時間となります。皆どうやった。まずは林寛太くん」

「いやー、すごくやりやすかったです。俺たちの良いところたくさん引き出していただいて。ありがとうございました」


 林は、やっと仕事が終わった、と、達成感と解放感で活き活きしていた。適度な素のままの姿に嬉しいやら、可愛らしいやらで目尻が下がった。


「ありがとう。そりゃ、君らええとこ尽くしやから。じゃあ次、堂島雅氏くん」

「緊張してたんですけど、意外と話せてよかったです。またおすすめのスイーツ、教えてください。今日はありがとうございました」


 堂島は、まだ緊張から解放されていない様子で、それでもこぼれている笑顔は心を開いてくれているように見えて同じく愛らしく感じた。


「ありがとう。是非是非。俺にも教えてほしいな。じゃあ最後、加地恭介くん」

「俺も緊張しました。でも、本当に、小野上くんは飾らない人で……安心感のある人だなと。今日はありがとうございました」


 他意はないのだろう。一生懸命言葉を考えてコメントしてくれているのは分かるが、無意識だろうか、「本当に」とまるで以前から知っていたような意味が含まれているように聞こえ、ドキッとした。しかし、他の二人は変わらぬ様子なので、突っ込まずに進めることにする。


「ほんまにありがとう。というわけで、今日は彼らに来ていただいたのですが、告知、あるんよね」


 訊いてみると、林が元気に返事をした。


「はい、今、俺たちS@Hは、あ、他に佐山三知久と浦井俊ってメンバーが居るんですけど、五人で今、ライブツアーをしてるんです」

「五年目にしてやっとのドームツアーなんですよ。一般席も用意してあるので、来てください。一週間前には発売開始してるんで」

「今、福岡公演が終わって来週の札幌の方が絶賛販売中……と言いたいところなんですけど、完売してしまいまして……」

「えへへ……」

「ええ、完売したん。昨日からとかじゃないっけ」

「そうなんです。本当に、有難いことです」

「有難いです」

「皆さんのお陰です」


 見えもしないラジオの向こうの視聴者に軽くぺこぺこと頭を下げる仕草は真摯で、流石うちの事務所のタレントだと、じんと感じる。


「来週の七月二十八日日曜日、二十九日月曜日がさっぽろドーム、来月八月十日土曜日、十一日――」


 加地が、安定感のある声でライブの日程を読み上げている間、他の二人は今にも会場で騒ぎ出したい、楽しみで仕方がないと言いたげに、台本を見詰めてウンウン、と頷いている。


「――で、一週間前に告知、販売開始しますので、是非是非、来てくださったら嬉しいです」

「来てください、よろしくお願いします」

「お願いします」


 読み切った加地の言葉を追って林のあざとい声、そしてそれに堂島の真面目ながらも低燃費な声が続いた。


「では、私、小野上道也が十八局でお送りして参りました、『日曜はおののとのんびり』、来週のゲストは、以前ですね、ドラマで共演したことのある、佐伯里沙ちゃんです。お楽しみに。それじゃあ最後は、今かかってる曲のタイトルを紹介して、お別れしましょう」


 S@Hの三人に振ると、林が「せーのっ」と声を掛ける。


「S@Hで、『アクアリウム・レイン』。ありがとうございましたー」


 しっかり最後に礼を告げると、マイクの音を集めるボリュームが少しずつ弱まっていった。


「お疲れさまでした、今日はほんまにありがとう」

「お疲れさまでした」

「こちらこそ、本当に、ありがとうございました、楽しかったです」


 俺の横に座っていた堂島、右斜め前に座っていた林が椅子から口々に言いながら腰を上げる。それに対して、加地は空気が抜けたように宙を見上げ椅子に座り込んだまま動かない。


「あれー、キョウちゃーん。生きてる、緊張しすぎちゃった」


 いや、宙を見ているわけではなかった。俺の方を、見ていた。何の感情もない目で。林の揶揄うような問いかけで意識が覚めた加地は、ハッ、と息を吸って肩をびくつかせ、慌てたように立ち上がった。


「す、すみません。ありがとう、ございました」

「ん、ありがとう。じゃあ、また皆、一緒に仕事しよな」


 そう言うと、片手を挙げて出口に向かい、加地の精気の抜けた顔を盗み見てはこっそり肩を竦めた。

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