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「さしずめ、村瀬は海外で勉強ついでに、キャリア積んで、馬を助けるボランティアでも発足するんやろ。そんなん、目に見えてる。ああいう企業に勤めながら、なんで今まで思い付かんかったんか不思議なくらいや。まあ、海外に向かわせてもらえるほどの実力が付くまでは、何も、考えられへんかったんやろうな」
水の入ったグラスの底を机に付けたまま傾けてぐるぐると回しながら発音する俺の声も、掠れていた。加地は顔を歪めたまま笑顔を作り、だらん、と、背もたれに腕を引っ掛けて背を預けた。
「はは、そんなことが、あるんですね。まるで、運命みたいだ」
「運命なんよ、二人は。ほんで、俺と加地くんは、ミチルにとって偶然でしかなかったんや」
氷が消えかかった水を飲みながら、素直に目に涙を浮かべたり、屈辱的な笑みを作ったりできる加地を羨ましく思った。
俺の方が、屈辱的な筈なのに。ミチルと長く一緒に居た俺より、加地の方が先に、ミチルの未来を知ったのだから。
その後、通夜のように静かに互いの手元の食器を綺麗にすると、加地を先に、俺は一、二分遅れで会計に向かった。財布をしまったついでに腕時計を取り出し着けてから確認すると、十五時過ぎ。そんなに経ってしまったか。店先で立ち止まってスマホの通知を確認すると、SMSの通知が来ていた。
どうやら登録していない番号かららしく、数件同じ番号からメッセージが届いているからか一つの通知にまとめられてしまっていて、メッセージの流れがわからない。ただ見えるのは、最後に受信したものかと思われる「来週 金曜12:00」だけだ。通知のバナーを右へスワイプするとロックを解除して、SMSを開いた。
〈村瀬だ〉
〈お前とミツがよく使ってたビジネスホテル〉
〈1階のカフェ〉
〈来週 金曜12:00〉
随分勝手だなと思いつつ、スケジュールをまるで把握しているかのような時間に約束を押し付けられたことに寒気を覚えながら、返事は送らずにいた。




