14 - 1 【日常】
男という生き物は、強くあるべきものだと思っていた。泣かず、怒らず、くじけず、頼られ。それが正しい男の在り方だ。そう思っていたあの頃の俺は、見てくれだけでもそうであるようにしようと髪の色を明るく染め、眉を極端に整え、制服を着崩した。そうすることによってそれなりに俺の周りには人が集まったし、成績こそ残念だったものの、地頭はそれなりに良かったからか甲斐性を見出され、頼りにもされてきた。
でも、それは学ランが似合っていた頃の話。あれからもう十年以上も経った。つまり、それ相応の長さの時間を生きてきた。その分色々あって、強さの形の勘違いに気がついた。そして、必ず強くいられる人間が一握りであることも知った。
人間には必ずボロの一つや二つはあって、しかし、それを逆境として乗り越えて生きている人たちがいるのは知っている。けど、いくつもボロを抱えている俺が、強い男で居られるわけもなかった。
久しぶりに会う小野上道也はやはり図体がでかくて、しかししっかりとした筋肉がそこに携わっているのが見て取れた。
「何年ぶりやろか」
「二年ぶりじゃない。だからまさか来てくれるなんて。無視られると思ってたからびっくりした」
「そんなに経つんかあ。それにしても、ミチルは変わらんなあ。あ、目元に皺できてる」
人混みの中、俺の全身を見渡してから急に距離を縮めてきたかと思うと、左目の下を親指で撫でられた。防御反応で目を閉じ身を離したが、悪い気はしない。返って心地好い。異常な距離感だったからなのだろうか。それとも道也の顔を知っているからなのだろうか。一人の男が小さく振り返ったが気にしないことにした。
「道也は少し変わったな、おじさんになった」
「誰がおじさんや」
「雰囲気が。なんかねちっこくなった」
「そうか」
「元からだけど」
前は普段から暗闇で肩を寄せて歩いていたけど、こうして真っ昼間に肩を並べて妙な距離感で歩いていると、ゲイのカップルにでも見られるだろうか。しかし、そんなことはどうでもよく、むしろそういう視線は慣れているのでどういうこともない。普段人と関わることが少ないため距離感を読むのが苦手なのだが、そういうのを気にせず一緒に歩いてくれるのが道也の良いところだ。
「しっかし、ほっそい腕やな。体、使う仕事なんやろ、そんなんで大丈夫かいな」
あまりにも眩しいので右の手のひらを太陽に翳した。しまった、日焼け止めを塗るのを忘れていた。あとで赤くなると痛いのに。その仕草に目が行ったのか、感心したように道也は声を漏らした。
「大丈夫。同じことの繰り返しだから、必要な部分にしか筋肉はつかねえんだ」
両手で腰を叩いてみせると、ぷふ、と道也は笑った。目尻に三本ずつ寄った皺が愛らしい。
「全く。下品なところは変わらへんのよな」
「何を。俺ほど品がある人なんて、どこにいるんだよ」
「そこらへんにおるよ」
そう言って道也は辺りを見回すので、再び手のひらで日傘を作り直しながら、わざとらしく見渡してみせた。




