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 マジか……。友人としての男を酔いさましにビジネスホテルに連れ込んだことはあるが、邪心ある相手をビジネスホテルに連れ込んだことはなかった。

 まだビジネスホテルなだけマシだ、これ以上邪心を刺激しないためにも色々と揃いすぎているホテルに行こうとしなかっただけ、マシだ、そうだ。

 言い聞かせながら、奥の大きなセミダブルのベッドで大の字になって寝そべっているミチルさんを見遣った。

 はーっ、と溜め息が漏れた。身長が五センチほど高く、自分より思いの外重い人間を運ぶのはひと苦労だ。

 しかし、酒を覚えたてのころに仲間を連れていったときもこんなんだったけな、と思うと、懐かしい笑みとともに再び小さく溜め息が出た。

 なんだかんだ楽しかったのにな。どうしてこうなったんだろう。「全部俺のせいなのに勝手にこうやって惨めになってんの」。玄関の方へ振り向いて体勢を整えながら、バーで聞いた言葉を思い出した。


 俺もクタクタに疲れたし、シャワーでも浴びて寝るか。ミチルさんとは違うベッドから立ち上がろうと後ろ手を突いたとき、不意に、後ろから右手首を掴まれた。体勢を崩して手を突きなおし、その方へ振り向いた。


「なあ、どうして同じ部屋にした」


 床に膝を突いているのだろうか。ベッドの下から胸から上を現し、甘えを帯びた瞳がこちらを見詰めていた。オレンジの光を集めた瞳の中心は黒々としていて、どす黒い魂胆を孕んでいた。


「ミチルさんが苦しくなったら助けるために居るつもりだったんだけど」


 振り解いて、伸ばされていた手を掴んだ。引き寄せた。


「ミチルさんは、それだけじゃ足りない」

「足りない」


 枕元に頭を置くように倒されたミチルさんは、嬉しそうに目を細めた。胸の中心が掴まれた。


「俺も、足りなかった。初めて見たときから」

「知ってる」

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