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6 - 1

 俺、ミチヒサ、スグル、マサシと、そしてマネージャーの脇田に加え、同じ事務所の先輩・小野上道也まで一緒に新幹線に乗り、片方の座席をひっくり返して向かい合って座った。膝に置いてあるのはご当地ものが入っているわけでもない、無難な品々が入った駅弁だ。


「いや、まさかゲストが小野上くんだとは。どうなんですか、ドラマ。佐伯里沙ちゃんとかいるわけじゃないですか」

「いやいや、何を。里沙ちゃんね、ええ子やよ。可愛らしい可愛らしい」


 柚子の香りが付いた卵焼きを摘まみながら訊くミチヒサに小野上は機嫌がよさそうに答えた。俺は片手に持ったステンレスのタンブラー気になり尋ねてみると、


「ああ、これ。金柑と生姜の紅茶。そこまで甘ったるくもないし、喉に絡む感じもせえへんから案外ご飯に合うねん」

「喉に良さそうですね。はちみつは入ってるんですか」

「これは入ってへんけど……メシ食うときの分やから。でもこれは……よいしょっと、これは、入ってるよ。これも喉に良いは良いけど、やっぱこっちやな、実感としては」


 これ、こっち、と両手に持った色違いのタンブラーを示してから、あくまで雰囲気やから、と少し恥ずかしげに眉尻を下げてはにかんだ。こういうとこなのだろう、彼がテレビの向こうやステージの前の人間を魅了するのは。


「キョウスケくん飲んでみる」

「あ、いいですか」


 弁当のお供として出していた深緑のものとは反対の、黒のリュックから出てきた臙脂色のものの蓋を開けてこちらに差し出され、両手で受け取って口を付けてみると、


「んっ、あまっ。甘いっすよ、俺甘いの苦手なんですよ」

「あはは、知っとうよ、ごめんごめん。これはマサシくんにあげようね」

「っす」


 頬を綻ばせながら受け取ったマサシは嬉しそうにひとくち飲み、美味いっすね、と目を細めた。きっとはちみつのみでできたわけではない甘ったるさに俺は頭がクラクラする寸前なのに、何故この人種はこうも美味そうにこんなものを飲めるのだろう。


「あ、富士山だ」


 窓を見るスグルの声につられて一同窓の外を覗くと、今にも通り過ぎんとする水色の山の姿。ミチヒサが口元を緩ませ、


「あれ見ると、あー、関東出たんだなって、感じるんですよね。関東の外に出られるくらい、少しは前に進めたかなって」

「あー、確かに。そういう見方もあるか」


 小野上は感銘を受けたかのように漏らした言葉をに続けて、


「俺は反対から来る側やからなあ……上りの新幹線で富士山見ると、俺は関東に出られるまでに成長したんやなーって」

「あー」


 メンバーと脇田が各々に顔を見合わせて頷いていると、ミチヒサの膝から弁当が落ちかけ、向かいにいるスグルがなんとか受け取った。が、スグルの七分丈の白いパンツの膝辺りが汁物の色に染まった。


「……あー」


 それぞれの想いを抱いて、俺たちはここを行き来する。

 「忙しくさせてもらっている」とはよく聞くけど、四人でそのありがたさを改めて心の中でひしっと抱き締めるのだった。

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