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第三話 ハズレ職でも、居場所はできた

職業鑑定は、無事に終わった。


鑑定を終えた人たちは、国王の右側に立つ者と、左側に立つ者に分けられていく。


俺は、左側だった。


「皆、ご苦労だった」


全員の職業鑑定が終わると、国王は右側にいる人たちに向かって、穏やかな笑顔で声をかけた。


「これから、勇者たちの歓迎会を用意している。皆には、そちらへ参加してもらおう」


そして、俺たち左側の人間には――


国王はちらりと一瞥しただけで、こう言った。


「鑑定は終わった。各自、好きにするといい」


……明らかに扱いが違う。


どうやら俺たちは、あまり役に立たない人間だと思われているらしい。


「ちょっと待って! 私は異世界に来たんだから、英雄になりたかったの! どうして私のことは気にかけてくれないの!? 私だって、あの人たちと同じように、もっといい待遇を受けるべきでしょう!」


人混みの中から、一人の少女が国王に抗議した。


驚いたことに――彼女が話しているのは日本語だった。


「もし君の職業が『庭師』のようなハズレ職じゃなければ、考えてやってもよかったのだがな」


通訳が国王の言葉を彼女に伝えると、周りにいた兵士たちも一斉に笑い出した。


「そんな……。絶対、絶対に何かの間違いよ! もう一度やって! もう一度鑑定してよ!」


だが、誰も彼女の言葉を気に留めることはなかった。


「失せろ、役立たず!」


通訳は容赦なく彼女を突き倒した。


「大丈夫か?」


俺は慌てて彼女のところへ駆け寄り、起き上がらせようと手を伸ばした。


しかし、彼女は俺のことなど見向きもしなかった。


ただ地面に座り込み、膝に顔を埋めながら、泣き声を漏らしている。


「せっかく……せっかく日本から離れられたのに……。それなのに、こんな……」


……異世界に来た人たちにも、それぞれいろんな事情や考えがあるんだな。


今は、そっとしておいたほうがいいだろう。


じゃあ、俺はこれからどうすればいい?


せっかく異世界に来たというのに、俺は何も手に入れていない。


これからのことを考えて少し悩んでいると――


キアラがこちらへ歩いてきた。


そして、俺の目を見ながら言った。


「家、行く?」


……俺をキアラの家に誘っているのか?


キアラの後についていくと、俺は彼女の家へとやってきた。


「キアラって、木の上に住んでるのか!」


思わず声が出た。


キアラの家は、大きな木の上に建てられた木造の家だった。


異世界の文化って面白いな。


なんだか、ファンタジーの物語に出てくる家みたいだ。


「ハーフエルフ……ハーフエルフ、木の上しか……住めない……」


キアラの言葉を聞いて、なぜか少し寂しそうに聞こえた。


……俺、何か変なことを言ったか?


理由は気になる。


でも、キアラのほうから話してくれない限り、こちらから聞くのもなんだか気が引ける。


家の中に入ると、俺は見覚えのあるものを見つけて驚いた。


それは――猫のぬいぐるみだった。


日本の店で売られているものと、何一つ変わらない。


キアラはその猫のぬいぐるみを指差して、俺に言った。


「これ、母さんが残したもの。母さん、美咲は、日本人」


「え????!!!!!!!」



「異世界転生って、雅人の時代になって初めて起きたことじゃないよ」


キアラが淹れてくれたお茶を飲みながら、俺は彼女から母親の話を聞いていた。


「母さんの話では、日本の昔の『神隠し』って、実は異世界転生だったんだって」


「母さんも、それで異世界に来たの。本当なら、王様についていって、もっと幸せな生活を送ることもできた。でも、私を置いていきたくなかったから……勇者になることをやめて、私を引き取ってくれたの。それで、私は日本語を覚えた」


なるほど。


だからキアラは、俺にこんなに親しくしてくれるのか。


日本人と話したかったのかもしれない。


「お茶も、ぬいぐるみも、全部母さんが持ってきたもの。母さんのおかげで、こういうものがあるの!」


キアラは母親の話になると、嬉しそうに話し始めた。


そのせいか、日本語もさっきよりずっと流暢になっている。


けれど――


この部屋を見る限り、ここには一人で暮らしているようだ。


俺は少し気になった。


美咲さん。


キアラのお母さんは、今どこにいるんだろう?


もう一口お茶を飲んだところで、キアラが俺に尋ねてきた。


「雅人、これから何をするか、もう決めた?」


「えっと……それは……」


そういえば、ちょっと恥ずかしい話だが、俺は異世界に来てからこれからどうするか、まだ何も考えていなかった。


「まだ決めてない? 大丈夫。それなら、しばらく私の家に住めばいいよ」


「えっ、本当にいいのか!?」


「キアラに迷惑じゃないか?」


俺は恐る恐るキアラに尋ねた。


だって……。


見知らぬ男が、一人暮らしの女の子の家に住むんだ。


ここは風習の違う異世界とはいえ、何かと噂する人だっているんじゃないだろうか。


けれど――


キアラは笑顔で俺に言った。


「日本には『お互い様』って言葉があるでしょう? 困ってる人を放っておくなんて、私にはできないよ。行くところがないなら、しばらくここにいればいい」


「本当にありがとう、キアラ」


女の子なのに、異世界から来た俺のことをここまで気にかけてくれる。


本当に嬉しかった。


その一方で、少し申し訳ない気持ちにもなった。


もし俺も、ものすごく強い職業だったら。


そうすれば、キアラが俺にしてくれたことに、何か恩返しができるのに。


だけど、俺の職業はただの猫召喚士だ。


……そういえば、これっていったいどんな職業なんだ?


他の人たちからはハズレ職だと言われたけど、もしかしたら何か上手い使い道があるんじゃないだろうか。


できることなら、少しでもキアラの役に立ちたい。


「キアラ」


「私の能力をどうやって使えばいいのか、教えてくれ。頼む」


俺は、あえて敬語でお願いした。


「じゃあ、外でやろう」


キアラはこくりと頷いた。


そして俺たちは、外へ出ることにした。


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