↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/70

27.恋に落ちるって多分こういうこと


 結局あの後、2人で笑い続け、ようやく笑いが収まったところで陛下は私を離した。

 2人で黙って庭を歩く。

 前までは陛下との間に流れる沈黙が嫌だった。でも今は違う。

 先ほど散々笑ったあとのせいか、気分はすっきりしていて、今は黙っていてもそれをきついとは思わない。

 むしろそれが心地よく感じられた。


「今日来てよかった」


 私の一言に陛下が私の方を見る。


「陛下の新しい一面が見られた気がします」

「なんだ、それは」


 陛下は呆れたようにそう言いつつ、優しく私を見る。

 まあ、たぶん私の気持ちの問題でそう見えるだけだろうけど。

 実際は陛下の顔は前とそんなに変わらない。不機嫌そうな顔をしている。

 でも僅かにその目が優しく見える気がするのだ。ほんの少しだけだけど。

 それが嬉しい。

 結局陛下はそのまま私を馬車の場所まで送ってくれた。馬車のところではラルフ達がずっと待っていたようだ。

 どうりで見かけないなと思っていたけど。

 ラルフ達の姿を見てか、陛下は馬車から少し離れた位置で足を止める。つられて私も足を止める。


「陛下、ありがとうございました」


 私がそう言っても陛下は何も言わない。どうしたのかと見ていると不意に陛下の顔が近づく。

 え?あ、あれ?どうして?

 疑問を口にする間もなく、陛下の顔が近づき、触れるほど近くに来る。そして私の額に何かが当たる。

柔らかな感触。

 それが唇だと気づくまでに少し時間がかかった。


「気をつけて帰れ」


 陛下は私の耳元でそうささやくと私から離れる。

 それだけだ。それが何だったかは何も言わず、私にさっさと背を向け、舞踏会の会場へと戻って行く。

 残されたのは私だけ。

 遠ざかる陛下の背を呆然と見ながら、私はそっとさっき唇が当たった額を撫でる。

 陛下の唇が私の額に。つまりそういうことで、これはその、そう、つまり。


「きす?」


 言ったとたん私は思わず顔を両手で覆う。

 熱い。顔が熱い。なんで!?なんであの陛下が!?あの陛下が!?あの陛下が私にキス!?どうして!?

 心臓の音がうるさい。今までにないほどけたたましく鳴る。

 キスされた陛下に、陛下にキスを!この私が!

 恋愛全くしてことがなかったこの私がキスされた!


「ええええええ!?」


 なにこれ!なんなの!?

 頭の中では陛下の笑顔が脳裏に何度もよぎる。そしてその度に胸がぎゅうとする。

 痛いのではない、ただ締め付けられるような、なんだかくすぐったいようなそんな感じがする。

 もちろん陛下の事は前から好ましく思っていたし、顔もかっこいいとも思っていた。

 でもこの、いまある感情とは違う。

 もっと、なんとういか、嬉しいような、どきどきするような、恥ずかしいような、それでいて切ないような。


「なななな、なんなのよ!?」


 こんな感情を私は知らない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。