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東京ダンジョン  作者: ルーデル
1章
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優しいエゴ


夜というにはまだ早いが昴と楓は静かに寝息をたてていた。


そんな2人を見て優しい表情を浮かべるも豹悟の胸中は穏やかではなかった。


(例のアイツとは出くわさないのがベスト、地下3階は多少体力を犠牲にしても走り抜けるべきか。

だがもし出くわしたらどうする?じっくり戦力を測るヒマがある相手とは思えない。

昴のヴェレーノと俺のグラセで足止めをしてそのまま逃げるか。

最悪の場合は俺が殿軍を…)



顕人はこういう時察しがいい。

豹悟はいま例のモンスターと遭遇した際の選択肢を考えてる。


「小野。」

と声をかけたら豹悟がハッとしたように顕人を見た。

「明日、例のモンスターに出くわした時だが…」



顕人がそう切り出したことによって豹悟は自分の思考が読まれてたことに気付いて少し照れくさくなった。



「遠慮なく逃げよう。

話を聞く限りだと勝てるか分からないし、勝てたとしても無事で済む相手だとも思えない。

幸い俺たちには足止めや撹乱の手段は豊富だしなんとかなるよ。」



顕人が気遣ってくれた事に小さく微笑みながら豹悟は答えた。

「そうだな、やっぱりそれが一番いいな。

岩手はちょっと戦いたがりそうだけど起きたら説明しとくか。」


顕人は少し考えたあと、一言付け加えた。


「逃げる時は全員でだぞ。」



豹悟はそこまで読まれていたのかと少しドキッとした。


「山縣にはかなわないな。

なんでもお見通しか。」



「付き合いは浅いがこんな状況でも小野が体を張って責任を果たそうとする姿は何度も見てるからな。

世の中それが出来る人間は多くないが小野は出来てしまう人間だ。」



「買い被りだよ、って言いたいところだけど…

あの地震で親父が死んでお袋も怪我をして、何もできずに結果だけ突きつけられて…

あの時の痛みは自分の身が裂かれるより大きかった。」


豹悟は寝てる昴や楓、そして顕人を順番に見つめて言った。



「お前らはいいヤツらだ、死なせたくない。

これはもはや俺のエゴだよ。

けど俺だって別に死にたくないしむしろ生きたい。

最優先は全員で逃げる事に変わりはない。」


豹悟の目にはしっかりと火が灯っていた。



多少不安は残るが、顕人の心もまた燃えていた。





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