柱
豹悟はいつの間にか眠りに落ちており、顕人はそれを見て安心し、自らも目を閉じた。
昴と楓は2人を起こさないように少し離れたところで見張りをする事にした。
「よっぽど疲れてたんだね。」
「小野は真面目だから気を張りすぎて疲れるんだろうな。
俺も少し心労のタネになってたかもしれないし。」
顕人や豹悟は元よりだが、昴と楓もチームを支えたいと彼らなりに必死だった。
楓は魔法を使えない分前線でみんなの盾となり、司令塔たる豹悟の負担を軽減していた。
昴は元々苦手な人間関係から逃げず、他の3人とよく連携しデバッファーとしての役割をこなした。
そんな2人だから豹悟が明日例のモンスターとの遭遇を憂慮している事くらいは察していた。
「小野君と山縣君がきっと明日の対策は話してただろうし、ボクはそれにいつでも応えれるように覚悟しとかないと…。」
楓は前線に立つ都合上常に一番リスクのある立ち位置にいる。
まして今回は別格の戦力を持つモンスターが相手とあり緊張を隠せないでいた。
「永崎…」
昴は決死の表情を浮かべる楓を見て思わず声をかけた。
出会った当初、魔法が使えない楓に対し苛つきを覚えたものだが、剣の腕を磨き、前線に立って敵をなぎ倒す姿を見て、苛つきはたちまち消え敬意にも近い感情を抱いていた。
そんな楓の必死な顔を見ると何とか気持ちを楽にしてあげたくなった。
「気負いすぎはよくない。
永崎は強い、けど一人で戦わせるような真似は絶対にしない。
俺たちがいる。」
昴は言い終わると少し照れ臭くなり反対方向を向いた。
楓は少し意外に思った。
昴が他の3人を信頼し、連携の努力をしている事は楓も知っていた。
しかし人付き合いが得意でないことも目にしたまま知っていた。
そんな昴が自分を元気づけるために慣れない言葉を使い励ましてくれる。
楓は一拍置いて感動が登ってきた。
「岩手君…ありがとう。
皆んなボクより器用だからね、めちゃくちゃ頼りにしてるよ。」
いよいよ持って照れ臭くなった昴だったが、同時にこれまでの人生で感じたことのない種類の高揚感を味わっていた。




