報告
帰りの道すがら豹悟が兼ねてより練習していた魔法に進展があった。
まず非常に不細工ではあるが形を僅かに加工することが出来るようになった。
これにより多少は物理的な攻撃力に補正をかけられる。
そしてもう一点は、大きな氷塊を飛ばすことしか出来なかった豹悟はその取り回しの悪さに苦慮していた。そこで豹悟出力を抑え、それを連射する練習をしたいのだがこれが難しい。
困り果てていたところ偶然放出する為に練った魔力を〝砕く〟事が出来た。
魔力を分ける事は豹悟には難しいが、力任せに砕く事は可能だったようで形や大きさもバラバラだが結果として氷の礫を多数放出することに成功した。
これにより豹悟の魔法は小回りが利くようになり新たに〝グレール〟と名前をつけた。
さらに多様性を増したこのチームは、このフロアでは既に敵なしだった。
だが先ほど地上からあった連絡に4人は緊張を強めていた。
「え?全滅?」
電話を受けた豹悟に衝撃が走った。
詰所オペレーターの原はこうやって全滅したチーム以外に情報を伝えるべく電話をかけていたが、本来電話は非常時以外かかってこないことになっている。
一瞬の判断ミスが命に関わる可能性があるダンジョン内で、こちらの状況が分からない地上からの連絡は控える方針なのだ。
よって安全を確保した上でこちらから行う定時連絡により情報伝達をしていた。
つまり、今回の電話はそれほどの内容ということだった。
電話を終えた豹悟は神妙な面持ちで3人に話し始めた。
「地下3階で森チームと鹿島チームが全滅したそうだ。」
「え?」
3人とも初め報告を聞いた豹悟と同じ反応をした。
「地下3階でだよね?しかも2チームも?」
楓が困惑しながらこぼした。
楓だけでなく他の3人からしても果たしてリザードマンは難敵だったが、2つのチームが全滅するほどの敵だったかと疑問に思ったのだ。
「俺も驚いたが、全滅の原因はダンジョンを徘徊する謎のモンスターらしい。
森チームの1人が逃げ延びて地上に報告をあげたところによるとそのモンスターは他のモンスターと違い積極的にダンジョン内を動き回っていることと、桁外れの戦闘能力を持つことが特徴だそうだ。
見た目に関しては体長は大きく2メートルほど、腕が長く爪は人間の顔ほどもあり非常にするどい。
瞬発力は凄まじく、スピードについていけないレベルだそうだ。」
「このダンジョン内にいて尚スピードについていけないって…」
顕人はここで強化された身体能力ですら敵わない戦闘能力を持つ敵がいることに戦慄した。
「森チームと鹿島チームは合流でもしてたのか?」
昴が何か引っかかったように尋ねた。
「いや、そういうわけではないらしい。
比較的近くにはいたようだが、それぞれが別の場所で襲撃を受けている。
何から何まで他のモンスターと違うようだ。
というわけでだ、本来であれば昨日の宿泊地点である地下3階まで戻ったのち休む事にしようと思ってたが、明日急ぎ足になってしまうが安全のために今日はこの地下4階で休みたいと思うが構わないか?」
3人は頷いた。
今回の探索は佳境を迎えようとしていた。




