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【二年生編】史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます  作者: 白い彗星
第十七章 "七帝魔導士"との出会い

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第1283話 壊れかけのノマ



 トイレの前で泣いているノマちゃんを前に、私たちはなにをどうすればいいのかわからなくなっていた。なんだこれは。

 とはいえ、私がどうにかするしかない。友達だからね!


「あの、落ち着いた?」


「な、なんどがぁ……」


 本当かなぁ……? めちゃくちゃ泣いてるままだけど。


「のぅ、私なにかしてしまったかの?」


「いえ、そ、そんな! 滅相もない!」


 アルテミィミスさんを困らせてしまったと思ったノマちゃんは、袖でぐしぐしと涙を拭う。

 いつもなら、持参したハンカチで涙を拭い「淑女の嗜みですわ」とか言いそうなのに。言ってるとこ見たことないけど。


 でも、そんな外聞も関係ないくらい、今ノマちゃんの中ではパニックになっているのだ。


「し、失礼しましたわ。わたくし……ノ、ノノ、ノマ・エーテンと申します!」


「そうか、ノノノノマ・エーテンじゃな」


「さっきやったぞこの下り」


 緊張に緊張を重ねたノマちゃんは、普段からは想像できない姿を見せている。

 いつも、淑女は冷静でこそ……みたいなことを言っているのに。冷静さの欠片もない。


 まあノマちゃんってわりと感情的だけど。


「冗談じゃ。ノマ・エーテンじゃな」


「……! び、ビビアン様が、わたくしの名前を……ふにゃあ……」


 感激に口を押さえ、そのまま膝から崩れ落ちるノマちゃん。倒れてしまう前にシルフィ先輩が支えるけど、本人は幸せ絶頂って感じの顔だ。

 こんなだらしない顔、間違ってもコーロランには見せられないな……いや、逆に親近感を感じてくれるかも?


 なんにしても、このままじゃ話進まないぞ。


「ごめんなさい、この子アルテミィミスさんのこと超尊敬してて。まさかこんなところで会うと思ってなかったから、いろいろ持たないみたい。落ち着くまで待ってください」


 仕方ない、私からフォローを入れよう。こう言っておけば、少なくともアルテミィミスさんからノマちゃんを『変な子』だと思われることはないだろう。ないよね?


 それを聞いたアルテミィミスさんは「ほぉっ」と少し嬉しそうに声を弾ませた。


「なんじゃ、そうじゃったのか。私はてっきり、私と同じ空間に居るのが嫌すぎて拒否反応を起こしとるのかと」


「こっちはこっちでネガティブすぎる!」


 幼女の笑顔でなんて暗いこと言ってるんだこの人!

 まあ、ノマちゃんの反応……というか、好きすぎる人に対する反応って一歩間違えたら嫌いな相手に対する反応みたいに見えちゃうものなのかもな。


 しかし、もしこの場に誰も居なかったら……いや、私がノマちゃんから話を聞いていなければ、誤解されたままだったかもしれないのか。


「ふ、フィールドさん! そんな、恥ずかしいですわ……そそ、尊敬なんて! おこがましい!」


「このタイミングでそれ言う!? ノマちゃんってば、思ったよりめんどくさくなるんだね」


「ははは、良い良い。好きなものに会った喜びは、人それぞれ。面倒上等じゃ」


 愉快そうに笑いながら、アルテミィミスさんはノマちゃんへと近づいていく。距離が縮まる度に、ノマちゃんは「は、はうっ、はぅっ」と繰り返している。

 なんかこういうおもちゃありそう。


 そして、手を伸ばせば届くほどの距離にまで接近して……アルテミィミスさんは、本当に手を伸ばした。

 んでもって、ノマちゃんの頭に手を置いたのだ。


「私を尊敬してくれとるのか、嬉しいのぉ。こんな未来ある若者に尊敬される人間で在り続けられるよう、私も努力せねばの」


「は、はぅ、はぅうわぁぅ……」


 にこにこと笑顔を浮かべ、ノマちゃんの頭を撫でていく。そんなことをするもんだから、ノマちゃんの頭からは湯気が上がるほどだ。

 顔は真っ赤で、多分体温も上昇している。氷があったら溶けそうなくらいだ。


 いや、そうじゃなくて!


「落ち着くまで待ってって言ったじゃん! なんでお触りしてるの!?」


「お触りって言うな」


「ほほほ、すまんすまん。少し、若者をからかってみたくなっての。ちょっとばっかしのお茶目じゃ。

 じゃが、本心じゃし、なんだか撫でたくなる頭をしとったから」


「性格悪いな! でも気持ちはわかる!」


「おい、この子溶け始めたぞ! 大丈夫なのか!?」


 その後、ノマちゃんを保健室に運びベッドに寝かせることで、なんとか原型に戻りついでに落ち着きを取り戻した。


 ノマちゃんは、ベッドの上でちょこんと正座をして、こほんと咳払いをした。

 こうしていると、とてもさっきまで醜態をさらしていた人間と同一人物だとは思えない。


「取り乱してしまい、申し訳ありませんでした。お恥ずかしいところを見せましたわ」


「本当にな」


 頬を赤く染め、照れた様子のノマちゃんは非常にかわいらしい。今すぐに撫でてしまいたいくらいだ。

 だけど、さっきアルテミィミスさんに撫でられたばかりの頭を私が撫でたら、なんかめちゃくちゃ怒られそうな気がする。


 まあ、醜態はさらしたけど……その分、どれだけ好きかは伝わったんじゃないかな。


「こうまで私のことを好いてくれている子が居るというのは、なんだか照れるのぉ」


「わ、わたくしっ……び、ビビアン様にた、助けていただいてから……ず、ずっと、尊敬申し上げて、上げまして候……」


 侍かな? 言葉遣いおかしくなってきてるよノマちゃん。

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