第1276話 私の実力を試す時
「それじゃあ、好きなようにやってごらん」
アルテミィミスさんからのありがたい申し出により、私は彼女に力を見せることとなった。
まさかこんなところで、"七帝魔導士"に力を見せることができるなんて。ワクワクすっぞ!
前生徒会長だったゴルさんは、下級魔導士相当の実力だという噂だ。それが本当かはわからないけどね、噂なんて真実とは違うのは私がよく知ってる。
もしかしたら、下級魔導士以上の力があったんじゃないか、と私は思ってるけどね。
そして目の前にいる"七帝魔導士"は、上級魔導士。その選りすぐりの七人で、そのうちの一人がアルテミィミスさんだ。
これは噂とかではなく、本当に……その実力を持っているってことだ。
ふぅ、さすがに緊張してきた。こうして距離を取ったうえで対峙しているだけなのに。
『契約者よ』
「うん。目にもの見せて、ギャフンと言わせてやろうと」
クロガネもやる気だな。私とクロガネで、力を見せる。やってやるぞぉ!
これは決闘ではなく、あくまで私の力を見るもの。彼女から攻撃はしない。だから、いつ始めるかは私次第だ。
このまま睨み合っているつもりはないし、そもそも私が動かないと始まらない。行くよ!
「クロガネ!」
クロガネの魔力が、上昇していく。口を開け、その中に大きなエネルギーが溜まっていくのだ。
それはまるで炎のように、ごうごうと。すさまじい力を持った魔力が、溜まり……そして、放たれた。
まるで光線のように放たれる竜魔息は、クロガネの通常技と言える。でも、その威力は魔術に匹敵する。
攻撃はしないって言ってたけど、魔術に打ち勝てるのは基本魔術だけだ。防御だって並のものは打ち砕くし、どうする! 避けるか?
「おぉ、すっごい威力。これは、並の使い魔の域を超えているね」
驚きと、どこか嬉しそうな様子が見えた。
ぺろりと、唇を舐める。その魅惑的な姿には、余裕さえうかがえた。
いったいどんな手を打ってくるのか。そう思っていると、アルテミィミスさんは手を伸ばした。
先ほどまで使い魔と戯れていたその手には、蜘蛛のスティが乗っている。まさか、あの使い魔で対応する気か? でも、どうやって。
「スティ、お願い」
次の瞬間……アルテミィミスさんの手から、白い液体が発射された。
……いや、あれは液体じゃない。液体に見えるくらいに太く束ねられた、糸だ。
ってことは、あの糸を発射しているのはスティか!
まさか竜魔息と撃ち合い、相殺でも狙っているのか? 強力な魔力の塊に、糸で対抗するなんてそんなの……
「え?」
そう思っていた。でも、次に目にした光景は、考えていたことはまったく違うものだった。
放たれた糸が大きく広がっていく。それはやがて、大きな盾となってアルテミィミスさんたちの前に存在した。
糸の盾だ。攻撃はしないって言ってたけど、まさか糸で盾を作ってしまうなんて。しかも、大きい。
あんなもので……という気持ちを抱くのも早々に、放たれた竜魔息が糸の盾に衝突する。
「っ……壊れ、ない?」
軽い盾であれば、それは竜魔息の威力に耐えきることなどできずに破壊されていただろう。
でも、今目の前で起こっているのは……糸の盾が、竜魔息を受け止めている光景だった。
ドッ……と大きな音を立てて、けれども壊れるどころかビクともしない。
「す、すごい……これが"七帝魔導士"の」
驚いているシルフィ先輩の声が聞こえた。私だって、今目を疑っているよ。
ゴルさんのサラマンドラのように、同程度の威力で相殺されたことはあった。でもまさか、こんな風に受け止められるなんて。
しかも、あんな小さな生き物から出てきた糸に。
「……ォオ……」
やがて、クロガネは攻撃をやめた。魔力が続く限り放つことはできるけど、このまま続けても破壊することはできないと察したのだろう。
それにしても、まさかクロガネの攻撃を……
「終わりかな?」
ぐっ……! 余裕ぶっちゃって!
「なら、今度は私が!」
魔術を使うか、それとも別か。魔術詠唱の時間だって待ってくれるだろうが、クロガネの攻撃を防いだ時点で私が魔術を撃ったところで二の舞になるだけだ。
なら、別方向から私の力を試す!
全身に身体強化の魔法をかけて、その場から飛び出した。
「へぇ、全身を強化か」
一気に距離が縮まり、けれど盾に突っ込まないように気をつけて。アルテミィミスさんに接近して、渾身の拳を放つ。
「だりゃあああ!」
……ドッ……と、放った拳は受け止められた。アルテミィミスさんの手のひらに。
彼女もまた、身体強化の魔法を使っていた。ただし、手のひらに集中させていた。
「へぇ、結構な威力だね。よほど鍛え上げたと見える」
「くっ!」
今度は逆の拳を放つ。それは首をかしげることでかわされてしまう。
受け止められた拳を引き、続いて顔面を狙う。けれど、それもかわされる。
ならばと、拳に意識を集中させておいて足払いを狙う。だけど、まるで壁に当たったかのように足に痺れが走った。
「いっ……!」
「はは、惜しい惜しい」
見ると、私が蹴り上げようとしていた部分に、魔力を集中させて鎧のようにガードしていた。
魔力の質で負けたからかはわからないけど、ぶつかったせいで私の方に衝撃が来たのだ。
「せぇい!」
ただ、悶えているわけにもいかない。まだまだこれからだ!




