第1084話 あぁー楽しみだなぁ
まさか、"七帝魔導士"の一人が学園に来ることになるなんて。
その存在は、名前だけ知っていた。世間的には常識みたいだけど、ずっと師匠と人里離れたところで暮らしていた私は世間に疎い。
でも、上級魔導士の中でも選りすぐりの七人。そう聞いただけでもテンションが上がるってもんよ。
「くふふふ……」
「ど、どうしたのエランちゃん。一人で笑って、気持ち悪いわよ」
思い出して笑っていると、クレアちゃんが話しかけてくる。
それは、私を不気味がっているような……あるいは心配しているものを見ている目だ。心配というのも「こいつ大丈夫か?」的な意味の。
私は頬を叩き、表情を引き締める。
「なんでもない、なんでもないよ」
「……そう?」
今回の話は、正式な発表があるまで内緒とのことだ。
一応私にも教えてくれたのは、生徒会に一年在籍しているから。まあ流れでリーメイにも聞かせることになったけど。
今思えば、リーメイだけ退出させてもよかったんじゃないかと思わないでもないけど、まあそれも後の祭りだ。
「それにしても、午前中歯ダンジョン、午後から授業……生徒会も大変ね」
そう、私が学園に戻ってきたのは、報告のためだけじゃない。授業を受けるためだ。
まあダンジョン探索するのだから、午後の授業はパスしてもいいとは言われたんだけど……私が受けたかったのだ。
こうやってみんなで同じ授業受けるの、嫌いじゃないからね。むしろ好き。
「まあ、もう慣れたよ」
「そう。ダンジョンでなにがあったのかは、話せないんだっけ」
「まあ、そうだねー」
今回の件を報告したら、シルフィ先輩からはダンジョンで起こった詳しい出来事は周囲に漏らさないようにと指示を受けた。
みんなに変に不安を煽るようなことをしたくないためだとか。
中には冒険者やダンジョンに憧れている子もいるわけだし、そういう意味でも不安にさせるのはよくないよね。
まったく、話せないことがありすぎて困っちゃうよ。
「いろいろあって大変だったんだけど、リーメイが生徒会に入ってくれたのが嬉しくて、疲れも吹っ飛んじゃったよ」
話せないことは多いけど、話せることももちろんある。生徒会新メンバーである、リーメイのことだ。
一年生含めて、生徒会の新メンバーは改めて発表があるだろう。でも、このくらいなら話しても問題ないようだ。
リーメイがダンジョンに行ったことはクラスメイトは知ってるだろうし、今頃リーメイは質問攻めにあっていることだろうな。
……うっかりいろいろ喋ってしまわないか、ちょっと心配になってきたぞ?
「ま、なんとかなるか」
「?」
シルフィ先輩だって、リーメイを信用して口止めしているはずだし。まあリーメイのみに甘ちゃんだからちゃんと考えているのかわからないけどさ。
そこまで私が考えるまでもないか。
……私が考えるのは、"七帝魔導士"のことだ。はぁー、いいなぁ……戦ってみたいなぁ。
「エランちゃん、なにか良からぬこと考えてる?」
「えっ……ど、どうして!?」
「そんな顔をしてるからよ。まるで『誰かと戦いてぇ』って顔してるわよ」
「私どんな戦闘民族!?」
クレアちゃんに指定され、ドキリというかギクリというか、とにかくそう感じてしまう。
なんで考えていることがバレたんだ……そして今更だけど、私すごく戦闘狂として見られているんだなぁ。
「か、考えすぎだよぉ」
「そう? 入学したての一年生と決闘したって話だし、それがきっかけになって戦いたい欲求がたまってるんじゃない。やめてよ、誰彼構わず襲うなんて」
「人聞きが悪すぎる!」
私は通り魔かなにかか! さすがにそんなことまではしないよ。
決闘だって挑まれたから応えただけだし。私は別に、悪いことはしていないもんね。
クレアちゃん、最近ますます言葉に容赦がなくなってきている。
「ま、変なことは考えずに、生徒会のお仕事頑張ってよ」
「お、おう」
かと思えば、こうやって優しい言葉をくれることもあるし。肩をポンポン叩いている。
私だって、一年前の私じゃないんだ。さすがにいきなり決闘を挑むなんてことはしないよ。いくら相手が"七帝魔導士"であってもね!
そりゃ、機会があればお手合わせしたいけどぉ……学園に来てくれるのは、教鞭を取るためだというし。普通に、授業を受けるだけでもためになるのではないだろうか。
それにしても、どんな人が来るのかなぁ。かっこいいお兄さんタイプ? きれいなお姉さんタイプ? それとも年季の入ったイケオジタイプ?
あぁー、名前だけでも聞いておけばよかった。みんな"七帝魔導士"のことは知っているし、そのメンバーについても知っているはずだから。
名前が分かれば、聞くなり調べるなりできるのだけど。
「ま、当日のお楽しみってやつかな」
「?」
今からあれこれ考えても、仕方ない。むしろ楽しみができたと思っておこう。
どんな人が来るのか、どんな授業をしてくれるのか。そして、どれほどの実力を持っているのか。
手合わせはできなくても、頼めば実力の一端くらいは見せてくれるはずだ。多分。
第十六章はここまでです。始まりました二年生編、まずは以前のノリを思い出すためにも物語を展開していきました。ダンジョンやら新しい要素も加えて!
次回から、第十七章 "七帝魔導士"との出会いが始まります。




