第1080話 魔導士対策の戦い方
「あぁあああ!」
フェルニンの鋭い声が響き、私に四方八方から剣が襲い来る。
魔力強化で速度を上げ、加えて残像を残すおまけ付き。それが魔法によるものなのか、それとも冒険者としての技術によるものなのかはわからないけど。
それにより、どこから私を狙っているのか……狙いをつけなくさせているのだ。
「……っ!」
振るわれる剣を、私は魔力強化した杖で防いでいく。力を弾くくらいなら、これでも充分なんだけど……
魔導士は当然魔導を使う。そしてひとたび魔導を使われれば、相手のペースに持っていかれる。
それをさせないため……フェルニンさんは、右へ左へ上へ下へと移動し、私に狙いをつけさせないようにしているのだ。
「くっ……!」
鋭い剣筋は、これまでに相手してきた魔導剣士とはやっぱり違う。魔導と剣を組み合わせたものと、剣のみに特化したもの。
フェルニンさんも魔導士だから、似たような感じではあるんだけど……あくまでフェルニンさんは、魔導を主体には使っていない。
剣と魔導を組み合わせるのではなく、魔導を剣のサポートとして使う。そんな感じだ。
「この……私も、いつまでもやられてばかりじゃ……!」
私は、一瞬の隙をついて飛ぶ。高く、ジャンプした。
上ならば、フェルニンさんの包囲から逃げることが可能だと……そう思ったからだ。
「冒険者の心得。相手の動きを、自分の好きなところへと誘導すること」
「!」
私を追うように、フェルニンさんも飛び上がっていた。私を追いかけてきた……にしては、かなり距離が近い。
そして、下から振り上げる剣が私を狙う。ギラリと銀色に光る刃は、当たったら痛いなんてもんじゃないだろう。
私はとっさに足先に魔力を集中し、振り上げられる剣を足で受け止める。足の裏に、鋭い衝撃が走った。
「ぐぐっ、ぎぎ……」
「! こんな受け方を……」
驚いた様子のフェルニンさんだけど、だからって隙は作らない……
……そうか、さっきの隙はわざと作ったのか。私が上に逃げることを計算に入れて、だからすぐに追いついた。
冒険者の心得、か。モンスターや魔物、もしくは人を相手にするとき、相手をどう動かすか誘導することで、戦いを有利に進められる。
そういう戦い方も、あるってことだ。
「はぁー!」
「!」
刃が、急激に熱くなっていく。魔法により、刀身がまるで燃えているようだ。
このままじゃ……! だけど、剣を受け止めているおかげで、フェルニンさんの動きが止まった。
今のうちに……
「させん!」
「!?」
だけど、私のやることを読んでいたかのように……フェルニンさんは自ら離れ、剣を振るう。
風の刃となったそれが、一太刀で幾つも放たれる。目には見えないけど、魔力でわかる。
さらに、風の刃に紛れてフェルニンさんも突撃してくる。
もちろん、ジグザグに。
「えい!」
考える暇もない……風の刃を防ぐために、魔力防壁を張る。四方八方からの攻撃を防ぐために、自分を囲うように。
身体強化とか魔力防壁みたいに、なにも考えずに使える魔法ならすぐに使えるのに……!
風の刃を防いでいく。けれど、防壁に当たるのはそれだけではなく魔力弾も。
風の刃に混ぜて、フェルニンさんが使っていたのだ。
「なるほど、さすがの固さだ。だが……」
声がしたときには、フェルニンさんはもう次の動きに移っていた。いつの間に背後に。
大きく脚を振り、防壁に当てる。そのまま、力を加えたまま一気に脚を振り抜いた。
まるで、ボールを蹴るみたいに。あんなに簡単にじゃないけど、すごい勢いで。
っていうか、これを蹴り飛ばすとか……どんな力だよ!?
「ぐぇ!」
ふっとばされた先は地面で、そこに衝突する。防壁内にいたため私自身にダメージはないとはいえ、吹き飛ぶ際にゆらゆらさせられてしまった。
同時に、防壁は解除される。集中力が切れたか。
それを狙って、フェルニンさんは……赤く輝く刀身を構え、私に向かって降ってくる。火の魔法で強化しているのだろう。
「覚悟……!」
上空からの落下スピードを加え、刀身の切っ先が私へと向けられていた。
受け止められない……そう悟った私は、とっさに風を起こし、自分を真横へと吹っ飛ばす。
その直後、フェルニンさんの剣が私がいた場所に突き刺さった。
「はぁ、はぁっ……」
「やるな、エランちゃん。ここまで猛攻しても、未だかすり傷一つないか」
「よ、容赦ないね……」
すぐに起き上がり、構える。
最初は乗り気じゃなかったくせに、結構……いやかなりノリノリじゃないか。
別に、いいんだけどさ。変に手加減されるよりも、こっちのほうがいい。
「って、来た!」
考えている暇もない。迫ってくるフェルニンさんは、私に考えさせる暇を与えないのだ。
なら……
「ファイアボール!」
杖を構え、叫ぶ。その直後、杖の先端から火の玉が放たれる。
「! はぁ!」
少し驚いた様子だけど、フェルニンさんは慌てた様子はない。構えた剣を振り、火の玉を叩き切る。
やっぱ魔法放ったところで、それが通用しなきゃ意味ないか……
魔法は魔術と違って、詠唱も技名も必要ない。
だけど、魔法とはイメージの力。頭の中でイメージして魔法を使うのではなく、技名をつけることでイコール即座にイメージに結びつけることができる。名前がついてたほうが、すぐに思い浮かべられるしね。
しかし、どうしたもんか……!
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