第1025話 人数を集めよう
コンコン
「失礼しまーす」
「え、エランちゃんっ」
扉をノックし、返事を待たずにそのまま扉を開ける。
後ろからは慌てたようなマヒルちゃんの声が聞こえるけど、構わずに部屋の中に足を踏み入れる。
そこには、すでに一人の男子生徒が立っていた。
「……相変わらずだな、お前は」
「どもー、シルフィ先輩」
「シルフィと言うな」
振り返り、こちらを見るのは……生徒会の新会長、シルフィドーラ・ドラミアス先輩だ。
この生徒会で唯一の二年生……あ、もう三年生か。通称シルフィと呼ばれていたその人だ。
前生徒会長だったゴルさん……ゴルドーラ・ラニ・ベルザからの推薦で、彼が新しく生徒会長になった。
まあ当時の三年生が卒業したら、ここには私とシルフィ先輩しか残らない。なので彼を選ぶのは当然のことだ。
学年以上に、経験値が違うもんね。
「それに、扉を叩いたら中から反応があるまで待てといつも言っているだろう。礼儀を知らん奴だ」
「放課後になったら来いって言ったのは、先輩ですよ。
それに、私と先輩の仲じゃないですかー」
「ちっ」
そしてシルフィ先輩は、私のことを嫌っている。と言うか、あまり良くは思っていない。
なんせ、シルフィ先輩はゴルさんのことを尊敬していたのだ。そんなゴルさんと私は、なんやかんやあって決闘をした。
結果的に負けてしまったけど、入学したばかりの一年生が三年生で生徒会長のゴルさんに挑むなど、身の程知らずだと思われたらしい。以降厳しい態度を取られたものだ。
それも、ここで過ごすうちに少しは柔らかくなった。と思う。
「まあいい。
それで、その娘が……」
「ま、マヒルです! よろしくお願いします!」
シルフィ先輩からの視線を受け、マヒルちゃんは肩を震わせる。
それからペコリとお辞儀をした。やっぱり緊張しているみたいだ。
マヒルちゃんが生徒会に入ることは、もちろんシルフィ先輩も知っている。マヒルちゃんを推薦したのは、生徒会の顧問だからだ。
今更だけど、前もって顔合わせとかしとけばよかった。
「それで、今日は……」
「もう少し待て。そろそろ……」
今日呼び出された理由について話そうとしていたところへ、ノックもなしに扉が開いた。
まったく、礼儀がなってないよね。
入ってきたのは、くたびれたおっさんだった。
「来ましたね。では、始めましょう」
この人こそ、生徒会の顧問であるカーゼン・レアメタル先生。あまりにも生徒会に顔を出さないから、もうほぼ居ないものだと思っていたね。
先生はソファーに座り、シルフィ先輩は会長席へ。
私たちも、ソファーに座る。
「それじゃ、在籍会員を確認しておこうか。三年生のシルフィドーラ・ドラミアス、二年生のエラン・フィールド、同じく二年生のマヒル。んで、顧問のカーゼン・レアメタルだ」
「先生! わざわざ確認するまでもない気がします!」
「そうだな。んじゃ、確認も終わったんで解散……」
「しません、待ってください」
早々に席を立ちあがる先生に、シルフィ先輩が待ったをかける。
なんてことだ……滅多に生徒会に顔を出さないからもしやと思っていたけど、この人かなりのめんどくさがり屋だ。
てか、冗談じゃなく本当に帰ろうとした!? たったこれだけのためにお茶会を断ることになったんだったら、私ゃ暴れてるぞ!?
「……現在、生徒会に所属している生徒は三名。それも、内二人は二年生……その上、その内一人は今日から所属という形だ。
正直、人数以上に戦力となる人材が圧倒的に不足している」
「こないだまでは、私を抜いても五人居たのにね」
「その内四人が上級生……それも、かなり優秀な人材だったおかげで、仕事は滞りなく回っていた」
そうだよなぁ。王族のゴルさんは言うまでもないけど、その婚約者だったリリアーナ先輩……そして友人のタメリア先輩やメメメリ先輩だって、優秀だった。
タメリア先輩なんて、普段はお茶らけてたのにね。仕事になるときっちりするんだ。
そんな優秀な人たちがいたから、私もなんとかやってこれたわけで。
「なので、メンバーを集めよう……というわけですか?」
おずおずと、マヒルちゃんが質問する。
「三人で回していくのはきつそうだし……何人か増やしたいよね」
「……エランには、俺と共に何人か候補を見つけておくように言っておいたはずだが?」
「あはは……なかなか、生徒会に入りたいって人はいなくて」
私だってこれまでに、何人にも声をかけた。
でも、そのことごとく失敗しちゃったんだよねぇ……
前生徒会メンバーが優秀だったからこそ、それに日和ってしまっている部分はあるんだと思う。
自分が生徒会のメンバーは務まらない……と。
クレアちゃんはともかく、ノマちゃんあたり受けてくれると思ってたんだけどな。
逆にやる気だったルリーちゃんは、私が却下した。気持ちはありがたいけど、ダークエルフであることがバレる可能性があることはさせられない。
認識阻害の魔導具があるとはいえ、シルフィ先輩は目ざといし……狭い空間だからこそ、バレる危険性も高くなる。
「まったく、無駄に人脈は多いくせに……」
「そういうシルフィ先輩は、どうだったんですか?」
「……予想はしていたが、三年生から生徒会に入ろうと言う物好きは居ない」
少しバツが悪そうだ。
まあ……それはわからないでもない。最上級生である今から生徒会に入っても、得することは少ないだろう。
入るならやっぱり、二年生か一年生だろう。
「頼りは全滅か……」
「シルフィ先輩は人脈少なそうですもんね」
「……」
「エランちゃんっ!?」
ともかく、これは……新しく生徒会を補充するには、一年生から選んだ方が手っ取り早そうだ。
でも、生徒会のメンバーなんてどうやって募集するんだろう。それに、その子の能力も重要になってくるだろうし。
私の場合は、決闘に負けた結果としてゴルさんに強引に生徒会に入れられたからなぁ。
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