第1024話 さて生徒会に行こう
とりあえず、二年生が始まったばかりということで……始業式ってやつとホームルームを終えて、私たちは解散になった。
魔導学園では、生徒の自主性を尊重している。なので、授業がなくとも各々好きに魔導の特訓をすることができる。
訓練所もあるし、学園の敷地内ならどこでだって魔導の練習はできる。
それに、魔導の練習以外にもいろんなことができる。例えば……
「エランさん、この後お茶会でもいかがですか?」
と、私に話しかけてきてくれたのはカリーナちゃん。一年生の時と同じく、私をお茶会に誘ってくれたのだ。
それはとてもありがたい申し出で、断る理由はない。
……本来ならば。
「ありがとうカリーナちゃん、お誘いとっても嬉しいよ。
……でもごめん、私このあと用事があって」
そう、用事がある。……なので、カリーナちゃんのお誘いを受けることはできないのだ。
「まあ、そうでしたの。それは残念ですね」
「私個人の用事なら、そんなのほっぽってお茶会に参加するんだけど……生徒会の、だから……!」
「めちゃくちゃ悔しそうね」
クレアちゃんの言う通り、めちゃくちゃ悔しいさ!
でもこればかりは、仕方ない。元々前から決まっていたことでもあるし。
生徒会のメンバーでもある私は、新しく生徒会長となった人物から呼び出されていた。個人的にではなく、生徒会の活動として。
「本当に、ごめんね」
「いいえ、予定があるのなら仕方ありません。またお誘いしますね」
「うん!」
カリーナちゃんたちとのやり取りを終え、私は荷物を持って教室「ドラゴ」クラスを出る。
向かうのは生徒会室……ではなくて、同じ階の別の教室、「ラルフ」クラスだ。
……教室に近づくと、出入り口に人影が立っていた。
「マヒルちゃん!」
「! エランちゃん!」
そこにいたのは、目的の人物であるマヒルちゃん。綺麗な黒い髪を左右で結んでいる女の子だ。
教室の中を捜そうと思っていたけど、わざわざ見つけやすいところで待っててくれたのかな。
嬉しそうに手を振る。そんな彼女の隣に……
「やぁ、エランー」
にこにこと笑みを浮かべた男が立っていた。
私は内心舌打ちをする。
「ちっ。なんでヨルまでいるのさ」
「顔合わせた側からそれ!?」
おっと、口に出てしまっていた。
……ヨル。彼も私と同じく黒髪黒目で、入学時の【成績上位者】で、クラスの【代表者】でもある。
共通点が多すぎて反吐が出ちゃうよ。
どうやらヨルは、こことは異なる世界から来たらしい。テンセイだのイセカイだの、意味不明な言葉を漏らしていたが……それは、マヒルちゃんの登場でようやく意味がわかった。
なんたって、マヒルちゃんはヨルの妹。つまり、異世界とやらの人間らしいのだから。
ヨルの使い魔召喚により、マヒルちゃんは召喚された。人間が使い魔召喚で召喚されること自体前例がないのに、それが別世界にいる妹だと言うのだ。
もちろん、『マヒルちゃんがヨルの妹』は周知だけど、異なる世界だのは当人以外私しか知らない。
「エランってば俺に厳しいよなー」
そんな複雑な経緯を持つヨルだけど……初対面の私に、迫ってきた。だから苦手だ。
話を聞くと、この世界に居ない黒髪黒目の特徴を持つ私が同じ境遇だと思ったから、つい迫ってしまったらしい。
でも、やられた方はたまったもんじゃない。初対面の男に意味不明な単語吐かれながら迫られるって、怖いんだからな
「別に、気のせいだよ。それで、なんでヨルがいるの」
「気のせいではないと思うな。……これからマヒルを生徒会室に連れて行くんだろ?
だから、見送りをと思ってな」
「おにぃ過保護すぎ。待つくらい一人でできるっての」
マヒルちゃんもヨルに対してはぞんざいな扱いに見えるけど、本気で嫌がってはいないようだ。
明らかに人間だけど、同時にヨルの使い魔として召喚されたマヒルちゃんの立場は、非常に曖昧なものだ。
とりあえず、使い魔ならば術者の側にいるべき……そうじゃなくても、見知らぬ土地で心細いなら兄妹で一緒なのは不自然ではないと、同じクラスになったけど。
そんなマヒルちゃんと待ち合わせ、これから向かうのは生徒会室だ。
「それにしても、マヒルが生徒会に推薦されるなんてなー」
ケラケラと、ヨルは笑う。
マヒルちゃんを推薦したのは、生徒会の顧問。ぶっちゃけ会った回数なんて片手で数えられるくらいなんだけど、とにかくその人のおかげでマヒルちゃんを生徒会に入れることが決まった。
当初は、この世界のことがなにもわからない自分が生徒会なんてムリムリと言っていたけど……
「マヒルは中学のときも、生徒会に入ってたもんな」
どうやら、ヨルとしても問題はないらしい。
不安でも自分を推してくれるというので、マヒルちゃんは受け入れた。
「なんならおにぃも、生徒会に入ればいいのに」
「俺は生徒会なんて柄じゃないだろー」
私としても、ヨルが同じ生徒会に入るのはやめてほしい。
「それじゃ、行こっか」
「うん。じゃあ、行ってくるから」
「あいよー」
マヒルちゃんの手を引き、足を進める。
入学したばかりの頃は、道が全然わからずに迷っちゃってたけど……さすがにもう、そんなことはない。
……なんだか視線を感じる。ルリーちゃんが仲間になりたそうにこちらを見ている。
でも、生徒会関連のことだから……連れていけないんだ。手を振って応えておくけど、こめんよ。
目的の生徒会室。そこに着くまで、とてもスムーズだった。
「こ、ここが……」
マヒルちゃんは、緊張した様子だ。
この中に、私たちを呼び出した人物……新生徒会長がいるのだ。




