第1076話 ギルドマスター
冒険者ギルドで、ダンジョンで起こったことを話す。
フェルニンさんを筆頭に、ガルデさんや私、リーメイと証言者もたくさんいる。ギルドとしては、無視できないだろう。
カタリアさんも、上の人に報告してくれるということだけど……
「直接お話していただいたほうがいいと思いますので……少々お待ちいただいてもよろしいでしょうか」
さすがに事態が事態だからか、自分の口から報告するよりもより確実に……その場に居合わせた私たち本人から、話をしてほしいらしい。
そのため、カタリアさんは少し席を外してしまった。こういうのは後回しではなく、その場で対応してくれるようだ。
勝手に帰ることもできないし……なんか、大ごとになってきちゃったなぁ。
「お待たせ致しました」
近くの席で待たされること数分。戻ってきたカタリアさんが私たちに声をかける。相変わらずにこっと微笑んでいるけど、先ほどとは雰囲気が違う。
正確には、彼女の後ろに立つ人物が、そうさせている。
その人物は、なんていうか……圧がすごかった。
そして、一歩前へ。執事風の男が、姿を現した。
「お初にお目にかかります。ハリベルト・ローヴェルトと申します」
痩せ型の、年配の男性。刻まれたしわと白髪が、彼が過ごしてきた年月を物語っているようだ。
目元にはモノクルってやつをかけてて、細目だ。口に蓄えたヒゲは、なんだか貫禄が見える。
見た目は、ただよおじいちゃん。けど、なんだろう……その内に秘めたものは、そのへんの冒険者とは比べ物にならないなにかがある。
「こちらこそ、お初に。私は……Aランク冒険者のフェルニン様、ですね。Bランク冒険者のガルデ様、それに魔導学園の生徒の方々」
そのおじいちゃんは、丁寧なお辞儀をしたあと私たちを見渡した。
なんか、見た目通り礼儀正しい人だなぁ。フェルニンもまた、相応の態度で応対した。
それにしても、カタリアさんはこの人を呼びに行ったってことなのかな。偉い人?
「皆様のお話、簡単にですが受付嬢の彼女から聞きました。ぜひ、お話の詳細をギルドマスターにもしていただければと」
ギルドマスター……冒険者ギルドのマスターってことか。つまり、このギルドで一番偉い人ってことだよね。
その人に、今の話をする。そのためにこの人が来た。じゃあこの人は、ギルドマスターへの案内人ってところか。
私たちは、顔を見合わせる。
わざわざ、そんなすごい人物に話を直接するってことは……やっぱり、これはただならない事態ってことなんだろう。
「わかりました。……彼女らも、共に居た方が?」
「えぇ、できればお願いしたく。貴重な証言者ですから」
冒険者じゃない学園の生徒からも、直接話を聞きたいのか。やっぱ帰らなくてよかった。
私も、私が話すことでなにか手がかりになるなら……喜んで協力しよう。
リーメイも同じ気持ちのようで、こくこくと頷いていた。
「ありがとうございます。それでは、こちらへ」
私たちの反応に深くお辞儀をして、おじいちゃんは私たちを案内する。
その後に続いて、私たちも歩いていく。まさか、報告して終わりだけのつもりが、ギルドマスターに会うことになるなんてね。
コツコツと音を響かせ、廊下を歩いていく。しばらく着いていくと、部屋の一角に立ち止まった。突き当たりの扉、そこをコンコンとノックする。
数秒して「入れ」と言葉が返ってくる。それを受けておじいちゃんは「失礼します」と扉を開けていく。
ここが、ギルドマスターの部屋かぁ。私たちも続き、部屋に足を踏み入れる。
うわ、なんな広いな……それに、豪華そうなものがちらほらある。
「ギルドマスター、今回の騒動に遭遇した本人たちを、お連れしました」
その人物は、部屋の奥に立っていた。私たちに背を向ける形で……窓の外を眺めていた。
その背中は大きく、そしてとても大きかった。大柄な男の人だ。
彼は、おじいちゃんの言葉に振り向く。
スキンヘッドに、右目を眼帯で隠した男。さらに左目には三本の鋭い傷が目元に刻まれている。
強面な男。ガタイもいいので、夜中に出くわしたらチビってしまいそうだ。
「よく来た。お前たちが、今回の騒動の……」
『は、はい」
その姿に、迫力に、さすがのフェルニンさんも動揺している。会ったことはないのだろうか。
怖がっちゃうのも無理はないよ。私だって今すぐここから逃げだしたいよ。
けれど、その人物は私たちを見てからにっこりと笑った。
「来てもらってすまないな……が、よく来てくれた。私がこの冒険者のギルドマスター、ザルドゥスだ。よらしくな、ゲッパゲパゲパゲパ!」
男は軽快に、腕を組んで笑っていた。
しかも、変な笑い方してやがる……キャラ付けでも狙ってるのかぁ?
ギルドマスターは、専用の席だろう机をバンバンと叩きつつ、部屋に設置されているソファーを指さした。座れということだろう。
「では、失礼します」
ペコリとお辞儀するフェルニンさんに続いて、私たちも席に座っていく。
ソファーは二つあったので、私とリーメイ、ガルデさんとフェルニンさんでわかれる感じだ。
そして、ギルドマスターも自分の席に座った。
「まずは今回のダンジョン探索、ご苦労さん。それじゃ、早速だが話を聞かせてもらおうか」
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