第1075話 久しぶりの冒険者ギルドへ
ダンジョン帰りの道は、驚くほど静かだった。
元々整備されているので、野生のモンスターが出てくることも少ない。とはいえ、人と誰ともすれ違わないくらいに静かな道だった。
途中、もしかして魔物とか出てくるんじゃないかと気にしていたけど、そんなことはなかった。
そして、無事冒険者ギルドにたどり着いた。
「さて、着いたな。俺たちは今回の報告に行くが、エランちゃんたちはどうする?」
「うーん……」
報告はガルデさんたちに任せて、私たちは学園に戻ってもいい。ここからなら、迷えずに帰ることができるし。
だけど……
「リー、中に入ってみたイ!」
うーんと考える。そんなとき、はいはい、と手を上げるリーメイは、冒険者ギルドに足を踏み入れたいと主張する。
それを聞いた私たちは、同時に顔を合わせて……思わず吹き出した。
来たことないし、興味あるのかな。
「?」
「や、なんでもないよ。じゃあ私も、ギルドに寄ろうかな」
「いいのか?」
「元々どっちでもよかったし、リーメイが残るって言うなら私もそうするよ」
私だってあんまり、冒険者ギルドに来ることはない。そりゃ私は冒険者じゃないんだし、当然だけど。
だから、久しぶりに見ていきたいなって気持ちもあった。
リーメイがギルドに残るなら、私も付き添うとしよう。リーメイ一人でも大丈夫だとは思うけど、ちょっと危なっかしいところもあるしね。
「それでは、行くぞ」
フェルニンさんを先頭に、私たちはギルド内へと足を踏み入れた。
冒険者ギルドというものは、当然だけど数々の冒険者が集まっている。冒険者同士で集まって情報を交換したり、なにか新しい依頼がないか確認したり。
それに、パーティーメンバーを募集していることだってある。
受付に歩く私たちに、視線が向けられる。私たちというか、フェルニンさんだけど。
凛とした佇まいで、歩く姿すら様になっている。その美貌もさることながら、冒険者ではなくてどこかの貴族だと言われても信じてしまいそうだ。
しかも、冒険者には珍しい魔導士。だからこそ余計に、フェルニンさんは人目を集める。
今だって、声をかけようか迷っている雰囲気を感じる。
「フェルニンってば、人気者なんだネー」
「あぁ、あいつはすごいやつなんだ」
後ろで二人が話しているのが聞こえる。
ガルデさん的には、幼馴染が有名人になって嬉しいタイプなのだろうか。
私は振り返り、にんまりと笑みを向けてみせた。
「そうだよねー、すごいからこそ、捕まえとかないと誰かに取られちゃうよねー」
「? そう、だな?
けどフェルニンなら、自分が気に入らない相手からの誘いは断る勇気も実力もあるから問題ないぞ」
……この、とーへんぼく……! 私が言いたいことが全然伝わってない! というか、フェルニンさんのこと全然意識もしてないのか。
これは道は険しそうだよ、フェルニンさん。
そんなこんな考えていると、受付にたどり着いていた。
「フェルニンさん、お疲れ様でした」
「あぁ」
「あ、カタリアさんだ」
労いの言葉が聞こえ、後ろからひょいと顔を出すと……そこには、見知った顔があった。
カタリアさんという、おっぱいの大きい受付嬢さんだ。私がこの国に初めてきた時、とりあえず立ち寄ったこの冒険者ギルド……その時案内してくれたのが、彼女だ。
彼女が宿を教えてくれたおかげで、私はクレアちゃんと出会うことができた。もし別の宿だったら、まったく違う出会いになっていただろうな。
「エランちゃん、久しぶり」
にっこりと笑顔で応対してくれる。これが本物か……!
カタリアさんとは、ギルドに来る頻度が少ない中でもちょくちょく会う。ちょっとした顔見知りだ。
カタリアさんも、冒険者でもない私のことを覚えてくれているのは……この黒髪黒目のおかげだ。
こういうときは、この変わった特徴でよかったなと思う。
「そっか、今日魔導学園の生徒とダンジョンに潜るって話……」
「私たちのことだよ」
「だヨ」
えっへん、と胸を張る。
二人もそんな人物がいるのだから、カタリアさんは苦笑いを浮かべていた。
「それで、報告だが……」
私たちをチラリと見たフェルニンさんは、なにも触れるでもなく報告の時間に入った。
なんか、触れられないとそれはそれで寂しいものだ。
フェルニンさんは的確な報告をしていた。よく纏められている。
「異様な数の魔石。二階層の魔獣、倒しても復活する……」
「あぁ。魔石に関しては、ダンジョンによってその数もまちまちだから、深く気にすることはないと思うが」
「そうですね。むしろ魔石が多く存在しているから、魔獣が生まれやすい。
問題は、その魔獣……ですか」
モンスターが魔物に、魔物が魔獣に。その要因となるのは魔石だ。だから、魔石がたくさんある場所に魔獣がいるのだって、不思議じゃない。
普通のダンジョンだって、下の階層に降りて魔石がいっぱいあれば、魔獣もいるだろうし。
問題は別だ。
「そうですか。それは、上に報告しておきますね」
話を聞き、メモのように紙に書き連ね……カタリアさんは言った。
フェルニンさんの話、疑うことすらなく信じてくれているんだ。やっぱり人徳すげえ。
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