第1074話 帰ろうよ
「ふぅっ、出たぁ!」
外の光にさらされ、眩しさに目を細める。
うんと伸びをすると、身体がぽきぽきと音を立てる。結構凝っているのかもしれない。
魔獣との戦いを終えた私たちは、ダンジョンから出た。二階層から一階層、そして今外へ。
二階層から出る際、周囲の氷を溶かしていった。別に放置していても問題はなさそうだけど……氷漬けの魔獣の倒し残しがないように、全体的に燃やしてきたのだ。その過程で氷が溶けた。
そして、一階層への階段を上る前に……念のために、また魔獣が復活しないか、その場で十分くらい待機してみた。
結果なにも起こらなかったので、ダンジョンから出てきたわけだ。魔石も完全に壊れていた。
「いやあ、大変な目に遭ったな!」
「ダンジョン探索……せいぜいモンスターや魔物の相手をするくらいだと思っていたんだがな」
ガルデさんとフェルニンさんも、腕や背筋を伸ばしていた。二人も結構疲れたみたいだな。
ダンジョンには慣れている二人だけど、やっぱり予想外の出来事には神経を使ってしまうみたいだ。
そして、初ダンジョンのリーメイは……
「リーメイ、大丈夫?」
「うン。みんなが居たし、怖くなかったヨー」
ダンジョンに入る前と同じ笑顔を浮かべたまま、なんてことはないと言ってくれる。たくましいな。
今回、リーメイのおかげで助かったところは多い。誘ってよかった。
なので、頭を撫でてみる。リーメイはにへら、と笑っていた。
「そうだリーメイ、生徒会に興味ある? メンバーを探してて、リーメイが入ってくれたらありがたいかなーって」
「今その話!?」
「生徒会ー? いいよ、入る入ルー」
「しかも軽い!」
ダンジョン内では、いろんなことが起こりすぎて聞くことができなかったからな。
一段落したこのタイミングなら、問題ないと思った。そしてリーメイは、思ったよりもあっさりとうなずいてくれた。
さすがに私も少し驚いてしまう。
「嬉しいし、私から聞いておいてなんだけど……いいの?」
「うン。エランに、マヒルに……それに、シルフィもいるんでしョ? 楽しそう」
指を折り、すでに居るメンバーを数えていく。
まだ一年生のことは知らないから、そこは仕方ないけど……その中にシルフィ先輩が入ってくることが、なんだか嬉しいやらおかしいやら。
けれど、名前が出てくるってことは……リーメイにとっても、シルフィ先輩は特別に思っている相手だったりして?
「シルフィと話すの楽しいから、一緒にいるの好キー」
……まあリーメイ的には、そんな甘酸っぱい感情はなさそうだけど。シルフィ先輩は喜びそうだけどな。
というか、私が言うのもなんだけどリーメイって色恋の問題に興味はあるのだろうか。今度聞いてみよう。
今はとにかく……帰ろう。
「それじゃ、みんな……準備はいいか? 準備って言っても、特になんもないとは思うけどな」
ガルデさんの言葉に、私もリーメイも身の回りを確認する。今回持参したのは魔導の杖くらいだし、忘れ物もない。
一方フェルニンさんは、ダンジョン入り口に立っている憲兵さんとなにか話している。
多分、中であった出来事を報告しているんだろうな。
「お待たせ。さ、帰ろうか」
「うん」
ダンジョンでの一騒動。それを終え、私たちは来た道を戻っていく。とりあえず、ガルデさんたちと合流したギルド前まで行こう。
そこで、ガルデさんたちは報告をする。なんなら、私たちも着いていってもいいし。
……それにしても、あの魔獣なんだったんだろう。復活したこともそうだけど、私にやたら執着してたり……喋ったり。
確か……「見つけた」とか言っていたっけ? 私のことか?
「ねー、今後もダンジョンに入れたりするのかナー?」
歩きながら、リーメイが口を開いた。
それは、今回の騒動で……またダンジョンに入れなくなってしまうのではないかと、心配してのものだ。
あんなことが起こるんじゃ、下手に生徒をダンジョンに入らせることはできないもんな。
「そうだな……それも、あり得る話だな」
ガルデさんが答える。
「だけど、それも一つの情報として。あのダンジョンで起こったことが、他のダンジョンでも起こるのか……それとも、あのダンジョンだけなのか。それにもよると思う」
続いてフェルニンさんが答える。
他のダンジョン……か。そうだよな、今回のダンジョンで起こったことが、どの程度の規模で起こるのか。それが問題だ。
ガルデさんたちの反応から、今回ダンジョンで起こったことは初めてのこと。他のダンジョンでは起こっていない。
であるなら、今回の件はあのダンジョンだけで起こった……危ないのは、あのダンジョンだけってことだ。
「どちらにしろ、しばらくは様子見だろうな」
「あぁ。学園の生徒の問題だけでなく、我々冒険者としても無視できない問題だからな」
……しばらくは待ち、かぁ。そうなるよね。
冒険者ギルド、そして学園側もどんな答えを出すのか。私もこのあと、シルフィ先輩始め先生たちにも報告しないといけないし。
はぁあ、私の安全なダンジョン探索は、いつになるのやら。




