第1072話 魔石ごとやっちゃえ
「な、なんだこいつは……!?」
目の前の光景に、ガルデさんは驚愕の声を漏らす。
だけど、驚いているのは私たちも同じだ。
だって目の前には、さっき倒したはずの魔獣が立っているのだ。人のような姿をした、ゾンビのような魔獣。
青黒い肌と白濁の目が、不気味だ。さっき倒したと自信を持って言える……のに、なぜ復活したのか。
倒した魔獣の魔石が光り、かと思えば黒いもやを出して……それが元の姿を形作っていったのだ。
「グァ、アァ……!」
魔石を核に、復活した……そういう認識だ。
けれど、そんなの……今までに、見たことがない!
「あいつ……」
「グルォオ!」
「うおっ、散開!」
なにか言おうとしたガルデさんだけど、それよりも先に魔獣が火の玉を吐く。
一直線に向かってくるそれを避けるため、私たちはバラバラに飛びそれを逃れた。
多分、ガルデさんが言おうとしたことはみんなが思っていたこと。『倒したのに復活する魔獣を見たことがあるか?』だ。
私も聞きたいことだったし。
「って、やっぱり私か!」
魔獣の顔が、私の方へ向く。狙いは変わらず私のようだ。
まったく、あの白濁した目でよくも私の居場所がわかるもんだ……! いや、魔獣って魔力で相手の位置がわかるんだっけ。
復活する魔獣。そんなの、私は見たことがない。そして、ガルデさんやフェルニンさんもそうだろう。
魔大陸から接していたウミにいたリーメイは、もしかしたら見たことがあるかもしれないけど……なにも言わなかったってことは、知らなかった可能性が高い。
まさか、魔獣が復活……か。ちょっと、予想外すぎるな。
「っ!」
魔獣が動く様子を見せる。だから私は、咄嗟に全身を魔力強化した。
おかげで、魔獣の動きがさっきよりよく見えて……素早く動く魔獣がすでに目の前にいたけど、拳を避けることに成功する。
そのまま下がり、魔力弾を複数放つ。やっぱり効果は薄い。
さっきみたいに、首を斬り落とす? いや、また復活されたら同じことだ。
「エランちゃん、悪いが引きつけておいてくれ!」
「わかった!」
フェルニンさんの言葉に、私は攻撃を避けることに徹する。
魔獣の動きも、目で追えないほどじゃない。口からの魔法も注意していれば避けられるし、胴体は今は普通だ。
逃げに徹すれば、いくらだって……!
「水のぉー、オリの中!」
離れたところから、リーメイの援護。魔獣の身体を水の球体で覆い閉じ込めるのだ。
倒しても復活するなら、閉じ込めておいたほうが確実だからな。
問題は、閉じ込めてもその後どうするかなんだけど……
「ゴボッ……ブボォ!」
「!」
魔獣は、水の中にいながら火の玉を放つ。
それによって水は蒸発、かなりの高温の火の玉のようだ。
だけど、あんなことをしたら自分まで巻き添えに……
「……関係ない、か」
魔獣は黒焦げになっているが、なんでもないように私に向かって歩いてくる。
首を狙った攻撃以外有効打が見つからなかったんだ……自爆しても、関係ないってわけだ。
ガルデさんとフェルニンさんも剣で応戦しているけど、やはり効果は薄い。
どうやって倒せばいいのか、わからない。可能性の一つとしては……
「魔石ごと、ぶっ壊す」
魔物や魔獣から出てきた魔石は、その辺りにある魔石とはまた違った価値があるらしい。
魔物として、そして魔獣としてのエネルギーとなっていたそれは、魔石単体となってもかなりの力を残しているのだとか。
だから、普通の魔石より高額に売れるとか、いい武器が作れるとか……良いことがたくさんあるらしいんだけど。
「ごめん、ガルデさん、フェルニンさん! 魔石ごと叩いちゃっていいかな!」
「! 惜しい気はするが、仕方ない!」
「それで奴を倒せるというのなら、任せよう。この際、多少無茶をしても構わない!」
よし、二人からの許可も取った! あとは、魔獣を魔石もろとも破壊してしまうことだ!
さっきみたいに、一度倒してから剥き出しにした魔石を叩くか……それとも、魔獣を消し飛ばしてそれと同時に魔石も壊すか。
後者は、それほどの威力を出すには魔術くらいしかないわけだけど。……ただ、あの魔獣……復活する前より硬くなっている。そう感じるのだ。
「リーが止めるから、エランはあいつを倒すことに集中しテ!」
「リーメイ!」
心強いことを言ってくれるリーメイは、水を触手のようにして操り、魔獣の足止めをしてくれている。
ガルデさんとフェルニンさんも、私に任せてくれている。
これは……応えるしかないよね。
「ふぅ」
軽く息を吐く。意識を集中……魔術を使うために、神経を研ぎ澄ませる。
杖を構え、魔術を使うための詠唱を口にする。
「絶対零度の氷襲よ、芯まで凍える冷気を持って……」
これは、学園で現れた魔獣に使ったものだ。
あの時の魔獣はその後、今も殺してしまわないよう苦労しながら研究していると聞いた。
そして、私は気づいた。この魔術なら、単に強大な力をぶつけるよりも、確実に魔獣を仕留められるものではないのか!
「そのものの時間を永久に奪い去れ!
永久凍結!!!」
詠唱が終わる。そのタイミングで、三人は魔獣から離れた。
私は杖の先端を魔獣に向け、その先端から冷たい冷気が流れる。狙いは、ただ一つ!
吠える魔獣を、強力な冷気が包み込んでいく。その身体が、一瞬にして凍っていく。
氷漬けにしてしまえば……後は割ってしまえば、倒すのは簡単だ!




