第1067話 魔石が多いよね
「うりゃりゃりゃりャー!」
「せい!」
リーメイの撃つ水の弾丸が魔物の足を止め、隙をついてガルデさんが剣で斬り裂いていく。
弾がガルデさんに当たらないか心配だったけど、リーメイは魔法のコントロールも抜群なので、問題はない。
冒険者とのパーティーは組むけど、魔導士との連携はあんまり経験がないはず。なのに、ガルデさんってば軽やかな動きだなー。
「はぁあ!」
別の方向では、剣を火の魔法で燃やし火の剣にしたフェルニンさんが、迫る魔物を斬り裂いていく。
さすがの剣さばきで、一閃。魔法の威力も上乗せされている。燃やしていると言っても、燃やしすぎて刀身が溶けてしまうなんてことはないはずだ。
ただ、その動きは魔導剣士とはやはり違う。
以前ダルマスも言っていたけど、魔導と剣を同時に使うのと、それぞれを扱うことじゃ違う……ってことか。
……っと、みんなの戦いに見とれてる場合じゃないな!
「おりゃ!」
魔力強化した拳で、魔物の顔面を殴り飛ばす。
下手に魔法を使えば同士討ちの可能性があるし、こういうときは身体強化の魔法の方が効率的だ。杖は仕舞っちゃった。
魔物たちに囲まれていたけど、分担することで一人一人が相手する数はぐんと減る。
それに、魔物を見る方向も仲間のおかげで決まっているし!
「これで、最後!」
最後の一匹の顔面をぶち抜くと、「キャウンッ」と普通の犬みたいな鳴き声を上げて、倒れ……黒いもやとなって、その場から消滅した。
周りを見れば、魔物は居らず。残っているのは、魔物が落とした魔石だけだ。
ふぅっ、と誰かが息を漏らす。
「はー、終わっター!」
「お疲れさん。二人とも、すごい活躍だったな」
「いやぁ、そんなことは」
「そんなことはあるだろう。二人がいなければ、こんなにあっさり殲滅はできなかった」
剣についた血を拭いながら、フェルニンさんが言う。その言葉に、嘘やお世辞はない。
そう言ってもらえると、なんだか照れるけど嬉しい。
リーメイも、ガルデさんに頭をわしゃわしゃと撫でられていた。あの二人、いつの間にあんなに仲良くなったんだ。
シルフィ先輩に見せたら嫉妬しそう。……あっ、あとでリーメイに生徒会のこと伝えておかないとな。
「それにしても……こんなにも魔物が出現しているとはな」
もうなにもいないが、フェルニンさんは周囲を見回す。目に見えなくても、なにがあるかわからない。警戒するに越したことはない。
「やっぱ、変なの?」
「……これまでに入ったダンジョンとは少し違いはある……かな。元々ダンジョンとは、変なことで溢れている。ダンジョンによって、違いも多々ある」
つまりは、ダンジョンの個性……みたいなものか。あるダンジョンは魔物が少ないけど、あるダンジョンは魔物がめちゃくちゃ多いとか。
それを変と言うか、ダンジョンの違いと捉えるべきか。
一階層に魔物が出たのだって、今までそういうダンジョンがなかっただけかもしれない。いきなり出現して、謎が多いのだ……分からないことも多い。
そう考えると、私たちが考えている前提がそもそも間違っているのかもね。それこそ、一階層に魔物は出てこないとか。
「ともかく、ギルドには報告しとくさ。他のダンジョンよりも魔物が多いっ……てな」
「それは、魔石が多いから?」
「そうなるな。モンスターが魔石を食らい魔物になる……つまりダンジョン内に生み出されるモンスターが、他のダンジョンよりも多いってことだ」
なるほどなぁ。魔物の……いや魔石の多いダンジョン。ここはそういうところらしい。
ガルデさんたちや、他の人たちが入ったときは、普通のダンジョンとあまり変わらなかったみたいだけど……
それでも、思い返せば魔石の数は他より多かったとか。
「魔石は自然発生するから、どのタイミングでできるかわからないもんね」
他の冒険者が最後にダンジョンに入り、私たちが今日ここに入るまでの間に、魔石がめちゃくちゃ増えたってこともあるかもしれないし。
そのあたり、結局考えてもわからないってことだよね。
ま、考えてもわからないことは考えない。今は、魔物からいっぱい魔石が出てきたことを喜ぼう。これでガルデさんとフェイルスさんの評価も上がるってもんだろう。
「さて、と。どうする、魔物との戦いで疲れたか?」
「私は大丈夫。でもリーメイは……」
「リーも大丈夫!」
元気よく、リーメイは腕を突き上げる。あんなことがあったのに、元気だなぁ。
ともあれ、このままダンジョン探索を続行する。二階層はすでにマッピングされているため、道に迷ったりすることもない。
マッピングされてても、魔物がどこから出てくるかなんてわからないけどね。
そんなことを思いながら、壁伝いに歩いていく。
「それにしても、ダンジョンで魔物に囲まれるのって……なんか迫力あるよね」
「そうだな。あんなことになっても混乱しないよう、冷静さが冒険者に求められるものだな」
「冷静さか……」
そんな会話を続けていたけど……ふと、気配を感じる。それは、私だけではないようで。
私たちは、揃って足を止め……前方に注意を払う。




