第1065話 魔物から魔石が出てきたよ
魔物が現れたが、それはガルデさんとフェルニンさんの手によりあっさりと倒されてしまった。凶暴な獣の姿は、もはやない。
まあ、魔物だからって言って一匹相手なら大したことはないはずだ。手練れの冒険者ならなおのこと。
ただ、それにしたって今の一瞬の攻防は、勉強できるものがある。
「わー、すごーイ」
「おー」
パチパチパチ……と、リーメイは拍手をする。私もそれに続くように拍手をする。洞窟内だ、音はよく響く。
フェルニンさんは剣を思い切り振る。多分、剣についた血を払っているのだろう。ガルデさんも同じようにして、それぞれ鞘へと戻していく。
くぅー、剣を仕舞う所作さえかっこいいなー!
私たちの拍手に、ガルデさんは少し照れた様子だ。
「いやぁ、あんなの大したことないってー」
「えぇ、本当に大したことなかったわ」
そして、フェルニンさんがピシャリと言う。それを聞いて、ガルデさんは苦笑いを浮かべていた。
相変わらずクールだなぁ。でもまあ、こういうところが素敵なんだけど。
とはいえ、素直に喜べばいいものを。魔物を倒したことよりも、ガルデさんと共同作業できたことを。
「……」
絶命し、消えていく魔物の側に近寄るリーメイを横目で見る。
魔物や魔獣ってやつは、絶命すると消滅するのだ。モンスターなんかは死体として残るけど、奴らはなにも残らない。なぜか、理由はわからない。
だから、魔物や魔獣に関して……その生態は、わかっていることは実は少ないのだ。だって実験しようとして、間違って命を奪ってしまえば消滅してしまうんだもの。
それに、あんな凶暴な生き物を殺さず捕らえるのは難しい。
「わー、消えてく消えてク……」
今の戦い。言ってしまえば、魔物の突進を避けて身体の側面を斬りつけただけ。
でも、突進を避けるタイミング、剣を振るう角度……なにより、二人の攻撃がほぼ同時に左右から急所を狙っていた。
それが、魔物をあっという間に倒した動きだ。息のあったコンビプレーだからこそ、すぐに倒すことができた。
「いやぁ、二人の息ぴったりだったよねー。すごいなー、相性バッチシだよ」
「!」
フェルニンさんの肩が少し跳ねる。
あんなことを言っていたけど、実際はガルデさんとの共同作業が嬉しかったに違いないのは、今の反応でわかる。
フェルニンさんは冒険者の間で人気で、あっちにこっちに引っ張りだこだという話だ。だから、ガルデさんと組んだ経験もないのかもしれない。
幼馴染とは言うけど、だからっていつも同じパーティーで組んでいるわけでもないのだろう。
だからこそ……
「あ、相性なんてそんな……でも、そうね。ガルデも、なかなかやるようになったじゃない」
「おいおい、なんだよ、その言い方は」
こうやって少しでも話す機会が増えると、私も嬉しいな。
まあフェルニンさんが素直になれないせいで、ガルデさんが苦笑いを浮かべるしかなくなっているのは、どうにかしたほうがいいとは思うけど。
この場合、素直になれないフェルニンさんが悪いのか、それとも察しが悪いガルデさんが悪いのか。
「みんなー、魔物消えちゃっタ。でも、魔石残ったヨ」
リーメイが言う。そして、それをひょいと拾い上げた。
死体も残らず消滅するとは言ったが、厳密には残るものもある。それが魔石だ。
魔物は、モンスターが魔石を食べて変貌したもの。魔獣は、魔物がさらに魔石を食べて変貌したもの。
だからだろうか。倒したその後には、魔石が残る。奴らが食った分の魔石……なのかは、わからないけど。
「よし、それじゃ回収しておくか」
「あれ、依頼外の魔石は採取しちゃダメなんじゃ?」
「それは、自然発生したものに関してだ。魔物や魔獣を倒し落ちた魔石は、別に回収しても問題はない」
ガルデさんがリーメイに近寄り、私の疑問にフェルニンさんが答えてくれる。
どうやら、魔石を回収するにも違いがあるようだ。
「自然発生した魔石と、魔物が落とした魔石。これは、一見同じだが別物だ。だから、見つかってもギルドに誤解されることはない」
「ただ、魔物を倒して魔石を回収したってギルドに報告はしないとだけどな」
拾った魔石は、手のひらほどの大きさだ。それを、ガルデさんは手持ちの袋に入れていく。
自然発生した魔石と、魔物が落とした魔石。これらは違うのか。
つまり、自然発生した魔石を『魔物からゲットした魔石なんで回収しました』なんて嘘をついても、バレちゃうってこと。ごまかすことはできないのだ。
なら、魔石をたくさん手に入れたければ魔物を狩りまくればいいのではないか?
そう思う気持ちもあるけど……今回はあっさりいけたけど、魔物は危険な生き物だ。討伐依頼ならともかく、魔石を回収するためだけに魔物を相手取るのは、効率が悪すぎる。
だったら素直に、魔物採取の依頼受けたほうがいいしね。
「魔物は、放置しておいたら魔獣になりかねない。だから、見かけたら倒したほうがいい……ただし無理はしない範囲でな」
確かに、師匠と暮らしてる時も……魔物は、見かけたら倒してたもんなぁ。
まああれは、魔導の練習みたいなものだったけど。
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