第1061話 初めてのダンジョン
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「わぁー、久しぶりだなぁ」
私の前には、大きな洞窟があった。国内にできた、一見場違いに見える洞窟だ。
近くに民家はなく、国の中ではあるが少し離れたところである。
これは、ダンジョンだ。なんで国の中にこんなものがあるんだと思うだろうが、それがダンジョンなんだから仕方ない。
「大丈夫かい? もし嫌な気分とかになったら……」
「ううん、大丈夫」
私を心配してくれる、Bランク冒険者のガルデさんが話しかけてくれる。
それに対して私は、問題ないと答えた。
さて、生徒会新メンバー加入から一夜明け、私は今ダンジョンの前にいる。
どうしてかと言うと、学園と冒険者ギルドでいろいろ打ち合わせる際に、現場は問題ないかの最終確認に私が選ばれた。らしい。
「それにしても、ガルデさんはともかくフェルニンさんまでいるなんて」
「ともかくってどういうことだ」
ここにいるのはガルデさんだけではなく、Aランク冒険者にして魔導士のフェルニンさんもだ。
腰まで伸びた白髪を、後ろで一本にまとめている。かっこいい佇まいだ。
私も将来、こんなかっこいい大人になりたいよね。
「よろしく。
……今日はちょうど、暇でな……その時、たまたま耳に入ったんだ」
「だから志願してくれたんだ」
私が冒険者とダンジョンに入るという話。それを聞いて、自ら志願してくれたのだという。
おかげで、頼もしい人が増えた。
今回は、この二人が私たちを導いてくれる冒険者だ。
「今回、ケルとヒーダは別の用事があったからな。俺だけってのも不安だし、フェルニンが居てくれてよかったぜ」
「! そ、そう……」
ガルデさんの何気ない言葉に、フェルニンさんは顔を赤らめ、そしてそらした。
かっこいい人だけど、可愛いところもある。ぶっちゃけ目の保養です。
ケルさんとヒーダさんがいないのは、なんか不思議な気分だ。だいたい、ガルデさんと三人一緒なイメージだから。
ま、フェルニンさん的にはガルデさんと二人になれてよかったんだろうけど。
……でもこれ、二人きりではないよな。あれ、もしかして私お邪魔?
でも、そもそも私がいないと今回のダンジョン潜りはなかったわけで……
「あれから、何度も中を調べたが、不審な情報はない。安心してくれていい」
「! あ、うん」
このダンジョンは、以前に入ったことがある。
そこでは"魔死者"がいたり、一階層目にはいないはずの魔物がいたり……ただの魔石採取のはずが、バタバタして終わってしまった。
今回は別に魔石採取ってわけじゃない。ダンジョンに入り、いろいろ直接見て、私……いや生徒の目から見て問題がなさそうか確認する。
そのため、入り口を見張っている警備の人に挨拶をして、早速中に入ったわけだけど……
「それで……その子は大丈夫なのかい?」
「ワー……!」
ガルデさんが指す先には、魔石をあちこち見つめているリーメイがいた。いつの間にあんなところに。
下半身お魚なのに、その動きは実に俊敏だ。
今回のダンジョン探索も、私以外に人を連れて行っていいという話になった。
前回の時はルリーちゃんとキリアちゃんを連れて行った。けど、ルリーちゃんはダークエルフ、キリアちゃんは体質でそれぞれ魔力酔いを起こした。
なにより、見るべきでないものを見てしまった。死体とか……ね。
なので二人は除外し、誰を……と考えていたところで、思いついたのだ。
リーメイは、生徒会に誘おうと思ってもいた。そのため、この場で勧誘するのも打ってつけだと思ったのだ。
それに……
「リー、ダンジョン初めテ……!」
リーメイは、ダンジョンを見たことがないらしい。
ウミの中にならあったのかもしれないが、リーメイは泳げない。そのため、ずっと海面を泳いでいた……というか浮かんでいた。
地上に上がっても、近くにダンジョンなんてあるはずもなく……なので、今目を輝かせているみたいに、ダンジョンに憧れがあったようなのだ。
「うん、実力は確かだよ。ちょっと抜けてるところがあるけど」
「エランちゃんに抜けてるなんて言われるのか……大丈夫なのか?」
「なんだと!?」
それはいったいどういう意味だ!?
「それにしても、人魚族か……話に聞いたことはあったが、この目で直接見るのは初めてだな」
リーメイを見て感心しているのは、フェルニンさんだ。
私以外にも、ニンギョを見たことのない人はいる。ガルデさんもそうだ。
国内にも、エルフと同じくニンギョもいない。こちらは、エルフのように差別的な問題があるわけではないけど。
単純に、海中に住むニンギョが、陸地の国に足を運ぶ機会がないってだけだ。
「リーメイ、あんまり遠くに行っちゃだめだよー」
「はーい、わかってるヨー」
やれやれ、本当にわかっているのだろうか。
というか、ダンジョンにも興奮しているけど……魔石のことも、よく見ているな。
綺麗な石だし、気になるのも無理はないか。
「はは、なんだか懐かしいなぁ。冒険者始めた頃、よくああしてたもんだ」
ガルデさんが、懐かしそうにしみじみ言う。
目にするものが初めてのものばかりだと、気持ちはわかる。
その隣で、フェルニンさんも……小さく、うなずいていた。経験、あるのか。




