第1060話 ちょっっっと軽率
生徒会にメンバーが新しく入った。めでたいことだ。
とはいえ、今日いきなりなにかをやるわけではない。いきなりお仕事なんてハードすぎるもんね。
やることがあるとするならば、生徒会に入るための書類を書くことくらいか。
そんなわけで、二人は書類にペンを走らせている。カリナちゃんはともかく、ルーランドも思いの外姿勢がいい。
「これで生徒会も賑やかになるかなぁ。シルフィ……ドーラ先輩と二人きりは、息が詰まりそうだったから」
「それはこちらの台詞だ」
前メンバーのゴルさんたちが生徒会に来ないようになってからというもの、シルフィ先輩と二人きりの空間は気まずいものがあった。
まあ、卒業するまではゴルさんはなるべく生徒会に来てくれたし、他の先輩たちも顔を出してくれたので二人きりになることは少なかったのだけど。
……とりあえず私のやることはというと、あとはリーメイに声をかけてみるくらいかな。他のメンバー集めとかは、シルフィ先輩に任せるとしよう。
すでに二人連れてきたんだし、頑張ったよね私!
「書けました」
「俺も」
二人の声が聞こえて、私はそちらに注目する。
シルフィ先輩が近寄り、二人から紙を受け取っていた。
「よし。あとはこれを顧問に提出するだけだ。顧問についての紹介は、本人がいるときにするとしよう。
……ルーランド、一応忠告しておくが、生徒会の一員となる以上は誰かに勝手に決闘を挑むなどの行為は禁止するように」
「わ、わかりました」
シルフィ先輩の鋭い視線が、ルーランドを貫いた。ついでに私も。
一年生で入学早々上級生に決闘を挑んだのだ。また同じようなことがないように、注意して置かなければならない。役職ある立場になったのだから、そのあたり気をつけなければならない。
カリナちゃんからも念押しされた後、二人は生徒会室を後にした。細かな仕事内容を教えるのは、正式にメンバーになってからだ。
それに、役職もこちらで決めておかないとね。
「これは予想外だったが、いい人材を得た」
「棚からぼたもちってやつだね!」
こういうのを、確かそんな言葉で表現するんだったか。
へへん、と笑う私に、シルフィ先輩は視線を向ける。なんか若干「なに言ってんだこいつ」って目をしている気がしないでもない。
「それで……ルーランドとの決闘は、お前自身どう感じた」
「どう、って?」
「なにか感じたから、生徒会に連れてこようと思ったのだろう」
それはそうだ。実際に杖を交えて戦って、だからこそわかることがあるのだ。
シルフィ先輩は資料上の彼の姿を見て、生徒会への勧誘を決めたのだろう。だけど、資料だけじゃわからないこともある。
実際に会って、話して、そして魔導をぶつけ合ったからこそ……
「さっきも言ったけど、ルーランドは魔力の扱い方がとってもうまいの。頭も切れる。ぶっちゃけた話、一年前の二年生のほとんどよりも実力があると思う。
だから私は、その点が生徒会に役に立つと思っている」
「お前にそう言わせるとは、相当なんだろうな」
「礼儀や言葉遣いは、まだこれからって感じだけど」
ふむ、と感心したように、シルフィ先輩はうなずいた。ただ、その後なにか言いたげな視線を私に投げかけていた。
まるで「お前が言うな」と言っているかのように。
他のみんなもそうだけど、私からのお墨付きって結構な判断材料になるのだろうか。
そりゃ私自身、魔導のことはそれなりに勉強しているつもりだけど。
「しかし……初対面の一年生からの決闘をそのまま受けるなど、感心しないな」
ギロリ、とシルフィ先輩の鋭い視線が私を射抜いた。
「ぐ……し、しょうがないじゃないですか。挑まれちゃったんだから」
「挑む方も挑む方だが、受ける方も受ける方だ」
「け、決闘したおかげでルーランドの実力を図れたんだし、結果オーライじゃないですか」
「それは結果だけを見た話だろう。だいたいお前は、いつも考えなしにだな……」
「……ご、ゴルさんだって、一年生からの決闘受けてたじゃないですか」
「……」
このままグチグチとお説教が続きそうだったので、私はゴルさんの名前を出す。
ゴルさんのことを尊敬しているシルフィ先輩は、私がやったのがゴルさんと同じ行動だと示され、口を閉じた。
そして、苦虫を噛み潰したような顔になる。
「……とりあえず。もう今回みたいな真似はするな」
それからしばらくなにかを考えていたようだったけど、諦めたかのようにため息交じりで言った。
私も、ほっとする。
「はぁい」
まあ、私自身ちょっっっとだけ軽率な部分はあったかもしれない。
挑まれたからってそれを全部受けてたら、さすがに疲れちゃうしね。うん、知らない人と魔導対決ってのは心が躍るんだけど、我慢我慢。
もし決闘を挑まれても、すぐに受けずに考えて行動するようにしよう。
「なんだか、ここに二人きりにしたら大変そうね」
「お、わかってくれるマヒルちゃん?」
「うん。主に先輩が」
「!?」
なぜだ、マヒルちゃんは私の窮屈な思いを感じ取ってくれたのではないのか!?
それを聞いて、なぜかシルフィ先輩もしみじみとうなずくのだった。
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